2013 Fiscal Year Annual Research Report
行動動物脳深部神経回路の可視化技術の開発と神経回路の生理・病理下での安定性の研究
Project Area | Generation of synapse-neurocircuit pathology |
Project/Area Number |
22110006
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
林 康紀 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, チームリーダー (90466037)
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Project Period (FY) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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Keywords | 神経科学 / 脳・神経 |
Research Abstract |
空間記憶課題を遂行するマウスの海馬神経回路活動イメージングと、得られたデータの解析を行った。この課題では、マウスは1次元の直線路を1方向にのみ走行するタスクを行う。走行路の特定の場所をreward areaとして設定し、目印として近傍の壁と床の模様を変えておく。マウスは走行路の一端から歩き出し、reward areaで報酬をもらう。走行路の反対端に到着すると、自動的に開始端にteleportされる。これを繰り返す事で学習を促す。最初はreward areaを通過したときに直ちに報酬が与えられるが、この非遅延課題で10回程度の訓練した後、reward areaで一定時間(通常1-2秒)停止したときのみ報酬が得られる遅延課題に切り替える。遅延課題である程度学習が成立した後は、reward areaの場所を変更し新たなreward areaの学習を促す。蛍光カルシウムセンサータンパク質G-CaMP7を海馬錐体細胞に発現するトランスジェニックマウスをこのタスクの訓練に用い、空間記憶を形成する過程の海馬神経回路活動のイメージングを行った。得られた画像データから、個々の細胞の活動を抽出し、それらのパターンの解析を行った。得られた個々の細胞の「場所受容野」を、イメージング画像の上に重ね合わせると、海馬の神経回路内においてそれぞれの場所情報をコードする細胞がどのように分布しているかを示す「場所細胞地図」が得るれた。マウスがreward areaに滞在している時間中に、ある一定の経過時間で活動する細胞がイメージングデータに含まれているか検討したところ、マウスがreward areaに入った時間から一定時間後に活動する細胞と、reward areaから出る一定時間前に活動する細胞の2種類の細胞活動を検索したところ、両方のタイプの細胞活動が見つかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、本研究計画での最大の目的としていた記憶関連現象に伴う神経細胞集成体の可視化が可能となったため、順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度はひきつづき、空間記憶課題を行っているマウスの海馬からイメージングしたデータについて、特に(1)繰り返しの訓練を通じて空間記憶を形成する過程における場所細胞の安定性(2)報酬地点を移動させて再学習させた際の場所細胞地図の変化、(3)海馬における空間情報と時間情報との関係、について詳しく解析する計画である。また、イメージングデータに含まれる特徴的な神経回路活動パターンの出現が、これまで海馬で知られている脳波パターン(θオシレーションやリップル波)の出現と一致するかどうかを明らかにするために、多チャンネル電極を用いた電気生理学記録とカルシウムイメージングの同時測定の系を構築する計画である。また、自閉症モデル動物と考えられている、ヒト自閉症患者で見つかっているShank2遺伝子の変異を導入したマウスでの同様な検討を行っていく。
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