Research Abstract |
「神経前駆細胞の動と静を制御する場と集団の原理」は,当領域「動く細胞と場のクロストークによる秩序の生成」の項目A03「組織から器官へ」に属し,(1)脳・脊髄・網膜の基礎となる三次元構造「神経上皮」が,ageや分化度の異なる細胞をいかに自身の中に共存させているか,(2)神経上皮中において,ヘテロな細胞たちの動きがいかに組み合わされ,細胞間の関係性がどう変化していくのか,(3)細胞の動きに裏打ちされた「関係性の変化・ゆらぎ」が,集団としての三次元構造および細胞産生力の維持・変化にどう貢献するのか,を明らかにする.本年度は,昨年度に導入したスピンディスク型共焦点顕微観察システムを最適化するためのバージョンアップを行ないながら,画像取得を積極的に行なった.また,細胞の動き・形の変化と細胞の分化度とをライブ観察時に結び付けて理解する事ができるように,「細胞分化あるいは未分化の決定・調節に預かるとされる遺伝子の制御領域(プロモーター,エンハンサー)を蛍光タンパク質遺伝子につなぎそれを発現させるようにとデザインしたトランスジェニックマウスを作製をめざし作業を進め,現在までに複数のラインを成功裏に得る事ができている. 一方,細胞動態の網羅的把握,定量的解析,そして統計的処理などを念頭にソフトウェアを導入するとともに,数理解析の専門家(複数)と連携的解析に着手し,動く細胞の分布についてランダムか否かなどの判定を行なう事ができるようになった. さらに,「場」の重要な因子の一つである細胞接着分子に注目しての機能阻害実験を実施し,神経前駆細胞の形態,核移動などに異常をきたすフェのタイプを得ている. こうした一連の結果を,学会(国内で行なわれた国際学会)および研究会で発表した. また,2011年6月11-12日には,研究室公開を行ない、一般の方々に研究の紹介を行なった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞動態の把握に必要な基本体制の構築がほぼ完了し,実際のデータ取得が進行している.データ取得にともなって種々の克服すべき問題も発生しているが,外部の協力者を得つつ,またソフトウエアの導入などを通じて柔軟に対応できている.さらに,データの質に幅を持たせるための新規イメージング系の立ち上げに向けての努力も進行中である.論文執筆目前のプロジェクトもあり,それを皮切りに次々と発表に向けて進む事ができそうである.
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Strategy for Future Research Activity |
全細胞の観察という新しいコンセプトでのイメージングを神経前駆細胞を対象に行い始めて,順調にデータが取得できてきている.新規性がきわめて高い事象については,記載を中心とした報告でタイムリーな論文発表をめざす.一方,機能実験との組み合せ,さらには数理モデル化への発展を念頭に置く重厚なプロジェクトも,ステップごとに突破を進める.外部の協力者開拓がこれまでの期間で順調に進んでいるので,新規性の高い手探り度の高い項目についてもより実質的な解析を行なう事ができると期待できる.大学院生の入学が決まっているので,人的な体制もより充実することが見込めている.
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