2012 Fiscal Year Annual Research Report
がん幹細胞と微小環境の相互作用の解明とその分子機構を標的とした治療法開発
Project Area | Integrative Research on Cancer Microenvironment Network |
Project/Area Number |
22112004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
秋山 徹 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 教授 (70150745)
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Project Period (FY) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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Keywords | 微小環境 / がん / がん幹細胞 / 造腫瘍性 / Lgr5 / GATA6 / Asef |
Research Abstract |
大腸がんおよび脳腫瘍の造腫瘍性、幹細胞性と微小環境細胞の相互作用について解析し、治療法開発のための基礎的知見を得ることを目的として研究を進め、以下の結果を得た。 1)神経膠芽腫幹細胞を用いたRNAi スクリーニングにより幹細胞マーカーの発現および造腫瘍性に必須の遺伝子を多数同定した。2)膜蛋白質EN-9、EN-10 が、神経膠芽腫幹細胞の運動、浸潤、造腫瘍性に重要な役割を果たしていることを見出した。さらに、NE-9およびNE10がユビキチンライゲース複合体に含まれるKLHL20 と結合することを明らかにした。3)大腸がんでは、7回膜貫通型蛋白質Lgr5 がmiR-363-転写因子GATA6 経路により過剰発現していることを明らかにした。さらに、Lgr5、GATA6の過剰発現が大腸がんの造腫瘍性に重要な役割を果たしていることを示した。4)大腸がんではAsef がNotch3-miR-1 経路により過剰発現していることを見出した。5)大腸がん検体から大腸がん幹細胞(CD44+CD133+)を分取し、実験に使用可能とすることに成功した。CD44+CD133+は、CD44-CD133-細胞に比較してLgr5、Sox2、Oct4などの幹細胞マーカーの発現が高く、sphere形成能、造腫瘍性ともに高かった。6)新たに、大腸がん幹細胞の造腫瘍性、低酸素状態で発現の増大するnon-coding RNA(ncRNA) の一種NR-Xを見出し、機能を解析した。7)神経膠芽腫ではDNAのhydroxymethyl化が亢進していること、hydroxymethyl化を触媒する酵素TET1の発現が増大していることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1) 神経膠芽腫幹細胞を用いたRNAi スクリーニングによりCD133 等の幹細胞マーカーの発現に関わる遺伝子を見出し、さらに造腫瘍性に必須の役割を果たす遺伝子を多数同定することができた。神経膠芽腫検体からCD133 あるいはCD15 陽性および陰性細胞をFACS により分取し、神経膠芽腫幹細胞に関する実験をさらに進める必要がある。2)大腸がん検体からFACS により大腸がん(CD44+CD133+)を培養可能とし、今後の実験の新たな土台をつくることに成功した。3) 膜蛋白質EN-9、EN-10 が細胞内ドメインでKLHL20 と結合するという新知見を得ることに成功した。また、これらの膜蛋白質が神経膠芽腫幹細胞の運動、浸潤、間質細胞に重要な役割を果たしていることが示され、これまで機能不明だったこれらの蛋白質の機能解明に大きな手がかりが得られた。4) 7回膜貫通型蛋白質Lgr5 の大腸がんでの過剰発現の機構について解析し、miR-363-転写因子GATA6 経路が重要な役割を果たしていることを明らかにした。ほぼ所期の目的を達成することができたと考えられる。5) Asef の大腸がんでの過剰発現の機構を解析し、Notch3-miR-1 経路が重要な役割を果たしていることを見出し、血管内皮細胞との相互作用の重要性が示唆された。ほぼ所期の目的を達することができたと考えられる。6) 新たに、大腸がん幹細胞の造腫瘍性と発現が相関する遺伝子をRNA-seq により網羅的に解析し、造腫瘍性に必須なncRNA の一種NR-X を見出し、低酸素状態で発現が増大することを見出した。7)神経膠芽腫ではDNAのhydroxymethyl化が亢進していること、hydroxymethyl化を触媒する酵素TET1の発現が増大していることを見出し、今後の研究の新たな展開の基礎がつくられた。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 造腫瘍性に重要であることを明らかにした1回膜貫通型蛋白質EN-9、EN-10 がユビキチンライゲース複合体に含まれるKLHL20と結合することの生理的意義を明らかにする。2) Asef のNotch3 による発現亢進における血管内皮細胞の役割を、i)Min マウスポリープおよびヒト大腸がん検体の染色、ii)血管内皮細胞と混合培養した大腸がん細胞におけるAsefの発現および運動能の解析を通して明らかにする。3) 大腸がん検体から分離した大腸がん幹細胞(CD44+CD133+)の造腫瘍性に重要なタンパク質およびncRNAを同定し、機能を明らかにする。4)大腸がん細胞の低酸素抵抗性におけるNR-X の役割を解析する。さらに、NR-X結合タンパク質を同定し複合体形成の意義を解明する。5)神経膠芽腫ではDNAのhydroxymethyl化が亢進していることhydroxymethyl化を触媒する酵素TET1の発現が増大していることを見出したので、その上流および下流を明らかにする。特に、hydroxymethyl化されたcytosineに結合するタンパク質を同定し、機能を明らかにする。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] The critical role of cyclin D2 in cell cycle progression and tumorigenicity of glioblastoma stem cells2013
Author(s)
R Koyama-Nasu, Y Nasu-Nishimura, T Todo, Y Ino, N Saito, H Aburatani, K Funato, K Echizen, H Sugano, R Haruta, M Matsui, R Takahashi, E Manabe, T Oda and T Akiyama
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Journal Title
Oncogene
Volume: 32
Pages: 3840-3845
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] The pleiotrophin-ALK axis is required for tumorigenicity of glioblastoma stem cells2013
Author(s)
R Koyama-Nasu, R Haruta, Y Nasu-Nishimura, K Taniue, Y Katou, K Shirahige, T Todo, Y Ino, A Mukasa, N Saito, M Matsui, R Takahashi, A Hoshino-Okubo, H Sugano, E Manabe, K Funato and T Akiyam
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Journal Title
Oncogene
Volume: 33
Pages: 2236-2244
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] ASBEL, an ANA/BTG3 antisense transcript required for tumorigenicity of ovarian carcinoma2013
Author(s)
Yanagida, S., Taniue, K., Sugimasa, H., Nasu, E., Takeda, Y., Kobayashi, M., Yamamoto, T., Okamoto, A. and Akiyama
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 3
Pages: オンラインのみ
DOI
Peer Reviewed
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