2011 Fiscal Year Annual Research Report
転移形成に関わるがん微小環境の解明とその分子機構を標的とした治療法開発
Project Area | Integrative Research on Cancer Microenvironment Network |
Project/Area Number |
22112008
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Research Institution | Japanese Foundation For Cancer Research |
Principal Investigator |
藤田 直也 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター・基礎研究部, 部長 (20280951)
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Keywords | がん転移 / 微小環境 / Merm1 / 血小板凝集 |
Research Abstract |
転移性がん細胞は異常な運動能・接着能・細胞外基質の破壊能など様々な性質を兼ね備えているが、これに加え転移先臓器の微小環境変化も転移形成に重要な役割を果たしているため、がん微小環境を標的にした抗転移薬の開発も進められつつある。研究代表者らは、高転移細胞株より調製したcDNAライブラリーを低転移細胞に遺伝子導入し、その細胞をin vivoでスクリーニングすることにより、新規がん転移促進遺伝子Merm1をクローニングすることに成功した。Merm1遺伝子は、がん微小環境により誘導されるがん細胞の細胞死を抑制することによりがん転移を促進することがこれまでに明らかとなっている。 Merm1を標的にしたがん分子標的治療薬の創成の為に、まず対象となるがん腫の検索を行なった。ヒト腫瘍cDNAアレイを用いて網羅的に検索した結果、これまで見いだしていた乳管がんだけでなく、メラノーマでもMerm1が過剰発現していることを見いだした。公的細胞バンクより入手したメラノーマ細胞株でもMerm1過剰発現を確認した。また、市販のメラノーマ組織アレイを用いてMerm1発現を免疫組織化学的に検討した結果、Merm1高発現をメラノーマ臨床サンプルでも確認することができた。またMerm1の機能解明に向けて、shRNAを用いたMerm1発現抑制メラノーマ細胞株の樹立を行なった。また、Merm1の発現制御機構の解析のため、Merm1遺伝子のプロモーター部位約2500bpをクローニングし、ルシフェラーゼ遺伝子上流につないだレポーターコンストラクトの作製を行なった。Deletion mutantを作製することで、Merm1遺伝子転写に関わるcis-elementの同定に成功した。このcis-elementに結合する転写因子は、Merm1発現が低下している細胞株で減少しているものが含まれており、この転写因子がメラノーマにおけるMerm1発現に深く関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に同定した乳管がんだけでなく、研究計画を前倒しする形でメラノーマにおけるMerm1発現を細胞株・臨床サンプルで確認することができている。ただし、shRNAを用いたMerm1ノックダウン細胞株の樹立がかなり難しくて手間取ったため、研究予定であったマイクロアレイ法を用いた網羅的遺伝子探索を行なうことができなかった。そのため、(2)と自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
がん微小環境との相互作用を介したがん転移促進機構の解明に向けて、本研究課題では(1)脈管内での細胞生存に関わるMerm1遺伝子と、(2)血小板との相互作用を介したがん細胞の増殖・がん微小環境変化の2点に焦点を絞って研究を進めている。(2)の血小板との相互作用を介したがん転移の促進機構は、近年、世界的にも注目されて数多くの論文が報告されている。そこで今後は、(2)の血小板との相互作用を介したがん細胞の増殖・がん微小環境の変化にも重点をおいて研究を推進していく予定である。
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