2013 Fiscal Year Annual Research Report
転移形成に関わるがん微小環境の解明とその分子機構を標的とした治療法開発
Project Area | Integrative Research on Cancer Microenvironment Network |
Project/Area Number |
22112008
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
藤田 直也 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター, 副所長 (20280951)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小郷 尚久 静岡県立大学, 薬学研究院, 講師 (20501307)
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Project Period (FY) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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Keywords | 癌 / がん転移 / 微小環境 / Merm1 / 血小板凝集 |
Research Abstract |
研究代表者はこれまでに、新規がん転移促進遺伝子であるPodoplanin/AggrusとMerm1などを同定してきた。 Podoplaninは血小板凝集促進因子であり、その血小板上の受容体であるCLEC-2と結合することにより血小板凝集を誘導し、血管内における腫瘍塊の形成促進ならびに免疫担当細胞からの攻撃の回避によりがんの血行性転移を促進する。Podoplaninの機能を阻害して血小板凝集を阻害する中和抗体の作製に成功した。担がんマウスモデルに本中和抗体を投与すると、当初の目的である血行性転移の阻害だけでなく、Podoplanin陽性がん細胞のin vivoにおける増殖を抑制した。その作用機作として、抗体自身のADCC活性に加え、血小板凝集時に放出される血小板からの増殖因子の減少が原因であることを明らかにした。また、PodoplaninとCLEC-2の結合を阻害する低分子化合物のスクリーニングに成功しており、その誘導体を100種類以上合成した。以上の成果は、血小板との相互作用並びに血小板を含む微小環境が、腫瘍の転移や増殖に関与していることを示唆している。 Merm1は、微小環境下でのがんの細胞死を抑制することで、がん転移を促進する。Merm1の発現制御機構の検討を行うために、Merm1遺伝子のプロモーター部位をルシフェラーゼ遺伝子上流につないだレポーターコンストラクトを作製した。部位欠失変異体を多数作製することにより、Merm1発現に必須なシスエレメントの同定に成功し、そのシスエレメント周辺に存在するMerm1遺伝子発現に関わる新たな転写関連因子の同定に成功した。また、LC-MS/MSによる分析の結果、Merm1に結合する複数のタンパク質の同定に成功した。以上の成果は、Merm1の機能を阻害するための新たな分子標的(転写因子ならびに相互作用分子)が同定できたことを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、研究代表者がこれまでに同定してきた新規のがん転移関連遺伝子の機能解析ならびに阻害剤開発を行なうことで、これらがん転移関連分子のがん微小環境における役割を明確にすると共に、日本の緊急的課題であるがん死亡率の大幅な減少につながる成果を得ることを目的としている。その目的に沿った成果が十分に挙がっており、当初の計画以上に本研究課題は進展している。具体例を挙げると、 1、血小板凝集促進因子Podoplaninの活性を阻害する中和抗体の作製に成功すると共に、中和抗体投与時に抗腫瘍効果が認められることを見出した。さらに、その中和抗体の抗腫瘍効果に、血小板凝集抑制効果が密接に関わっていることを見出している。この事実は、Podoplanin陽性がん細胞の増殖に、血小板凝集時に放出される血小板由来の増殖因子が関与していることを示唆しており、血小板ががん微小環境の形成に重要な役割を果たしているという新知見の発見につながっているため。 2、Podoplaninとその受容体分子CLEC-2との結合を阻害するヒット化合物を複数取得することに既に成功している。そこで、このヒット化合物の誘導体を100種類以上合成して誘導体の阻害活性との相関を検討することで、ヒット化合物の構造活性相関を検討している。これまでの結果から、ヒット化合物の阻害活性に必須な部位も明らかになっており、取得が非常に難しいとされるタンパク質ータンパク質間の結合を阻害するPodoplanin阻害低分子化合物を得ることができているため。 3、Merm1は、がん微小環境下でのがん細胞の細胞死を制御することで血行性転移を制御しているが、その詳細な分子機構は不明であった。今年度に行なった質量分析計を用いた解析により、Merm1の機能解析につながる可能性を含む複数の結合分子を見出すことに成功したため。
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Strategy for Future Research Activity |
がん微小環境との相互作用を介したがん転移促進機構の解明に向けて、本研究課題では、 1、血小板との相互作用を介したがん細胞の増殖・がん微小環境変化の解析と、 2、脈管内での細胞生存に関わるMerm1遺伝子の解析 の2点に焦点を絞って研究を進めている。 1、血小板との相互作用を介したがん転移の促進機構は、世界的にも注目されて数多くの論文が出ているが、研究代表者はすでに、がん転移に関わる血小板凝集促進因子の同定や阻害剤の開発を行なっており、これらツールを使用することでがん微小環境における血小板の関与をより詳細に明らかにしていく予定である。また、中和抗体の抗原認識部位の遺伝子クローニングに既に成功しており、この部位を用いた一本鎖抗体の作製を行なうことで、Aggrus阻害活性が腫瘍抑制に関係することをより直接的に証明していきたい。 2、Merm1に結合する分子に関しては、酵母のホモログであるBud23を用いた検討などが報告されていることから、できるだけ急いで論文発表していきたいと考えている。
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Research Products
(8 results)