2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Conversion of tumor-regulation vector to intercept oncogenic spiral accelerated by infection and inflammation |
Project/Area Number |
22114006
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
東 健 神戸大学, 医学研究科, 教授 (60221040)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸澤 宏之 京都大学, 医学研究科, 講師 (80324630)
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Keywords | ヘリコバクター属細菌 / ゲノム / 発がん |
Research Abstract |
がんの発生には慢性炎症や感染症が重要な役割を果たしている。近年、慢性炎症が続いていた臓器では、細胞中のさまざまな遺伝子に異常が生じてくる。すなわち、慢性炎症にさらされた上皮細胞の遺伝子にはゲノム異常が蓄積し、あるレベルまで異常が蓄積した細胞が次々とがん細胞に変貌していくものと推定されている。ピロリ菌感染を伴った慢性胃炎粘膜では高頻度に遺伝子変異が蓄積してきていることがわかってきた。したがってある一定レベル以上の遺伝子異常を獲得した細胞が次々とがん細胞に変貌していくものと推定されるが、炎症とゲノム異常の生成をつなぐ分子機構については不明な点が多い。近年、遺伝子情報をコードしているDNAやRNAの配列に変異を導入する活性をもつ一群の分子が次々と同定され、その機能からこれらの一連の分子群を遺伝子編集酵素と総称されるようになった。この遺伝子編集酵素の中で、ヒトの遺伝子に変化をもたらす能力を有していることが証明されている唯一の分子がActivation-induced cytidine deaminase(AID)である。AIDは、ヒトDNA配列上のシトシン(C)をチミン(T)に変化させることのできる能力を有する遺伝子編集酵素であり、その結果、二本鎖DNAの相補鎖の塩基配列はグアニン(G)からアデニン(A)に変化する活性を有している。我々は、ピロリ菌感染で誘導される炎症性サイトカイン刺激により胃上皮細胞にAIDが発現すること、胃上皮細胞へのAID発現によりp53をはじめとするさまざまながん抑制遺伝子や癌遺伝子に変異が生じることを認めた。したがって、ヒト胃上皮細胞へのAID発現によるゲノム異常の生成・蓄積が胃がんの発生に深く関与していることが示唆された。一方、同じヘリコバクター属のハイルマニ感染の病態を検討したところ、ハイルマニ感染マウスでは3カ月後にほぼ100%リンパ濾胞が形成された。しかし、ハイルマニ感染によるリンパ濾胞形成は、INF-γ欠損マウスで認めず、IL-4欠損マウスで認めた。したがって、ハイルマニ感染によるリンパ濾胞形成にはTh1サイトカインが深く関与していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ピロリ菌感染による遺伝子不安定性にActivation-induced cytidine deaminase(AID)が関与していることを認め、ハイルマニ菌感染によるリンパ濾胞形成に、Th1が強く関与していることを認めるなど、感染・炎症・発がんにおける分子メカニズムが証明されつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
神戸大学医学部質量分析総合センターにおける機器を利用し、メタボローム解析を進め、網羅的に、発がんメカニズムを解析することを推進する。
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Research Products
(5 results)