2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Mesoscopic neurocircuitry: towards understanding of the functional and structural basis of brain information processing |
Project/Area Number |
22115011
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
澁木 克栄 新潟大学, 脳研究所, 教授 (40146163)
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Keywords | 視覚野 / 体性感覚野 / 空間認知 / プリズム眼鏡 / 後部頭頂連合野 / 経験依存的可塑性 / 視覚野脳地図 / マウス |
Research Abstract |
マウスは身の回りの空間を視覚とヒゲの両方を用いて探索するので、視覚とヒゲの空間認知地図が一致する必要がある。しかし頭のサイズが増加する成長期には両者の不一致が生ずる可能性があり、不一致を補正するメカニズムがあると思われる。我々は4週齢のマウスにプリズム眼鏡装着を行い、視覚とヒゲの空間不一致を人為的に導入したところ、視覚野応答が抑圧されることが判った。また、プリズム眼鏡装着の前後で同一マウスの視覚応答の位置を精査したところ、マウス視覚野の単眼視領域でプリズム眼鏡装着の前後で実際に視覚野脳地図のシフトが起きることが判った。プリズム装着による視覚野応答の抑圧は、予めマウスのヒゲをトリミングしておくと生じないため、単に異常な視覚視覚体験によって生じたのではなく、ヒゲ入力を用いた空間認知と、視覚を用いた空間認知のズレによって生じたと思われる。このようなズレを認知するには、ヒゲ入力と視覚入力の両者が収束する連合野が関与すると考えられる。そこで連合野の候補部位となりうる皮質部位に電流を流し、その破壊効果を解析したところ、ブレグマの2ミリ後方、1ミリ外側の部位が最も効果が大きく、プリズム装着による視覚野抑圧がほぼ完全に消失することが判った。ここはマウスではMediomedial visual area(MM)として高次視覚野の一部と考えられてきた部位であるが、具体的な性質はこれまで殆ど調べられていない。このMMの性質を解析するため、前後の移動縞刺激やヒゲ刺激を加えたが、それぞれ単独では何ら効果が出なかった。そこで移動縞刺激とヒゲ刺激を逆相にして加えたところ、MMが活性化された。ちなみに同相にして加えてもMMは活性化されなかった。従って、このMMこそが、視覚とヒゲの空間情報を連合する責任部位であると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
視覚入力とヒゲ入力という異なるモダリティの感覚情報を如何に連合するかを神経回路レベルで解析するのが、本研究の目的であるが、Mediomedial visual area(MM)を連合の責任部位として同定出来たのは大きな進歩である。今後MMの性質を解析していくことにより、研究計画を達成できると予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
MMの応答について、フラビン蛋白蛍光イメージングによる解析に加え、さらに詳細な神経回路レベルの解析を、2光子顕微鏡などを用いて推し進める。 プロトカドヘリンは神経細胞特異的な細胞接着因子であるが、プロトカドヘリンアルファのノックアウトマウスではプリズム装着による視覚野抑圧が阻害されることが判っている。しかし一連の神経回路のどの部位に異常があるのかは判っていない。MMは異常が生じている部位である可能性があるので、今後プロトカドヘリンアルファの遺伝子改変マウスを用いてMMの応答について直接解析を行う。
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