2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Mesoscopic neurocircuitry: towards understanding of the functional and structural basis of brain information processing |
Project/Area Number |
22115011
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
澁木 克栄 新潟大学, 脳研究所, 教授 (40146163)
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Project Period (FY) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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Keywords | 視覚野 / 体性感覚野 / 空間認知 / プリズム眼鏡 / 後部頭頂連合野 / 経験依存的可塑性 / 視覚野脳地図 / プロトカドヘリン |
Research Abstract |
本研究はマウスの感覚連合機能の基本にある神経回路を解析した。マウスはヒゲと眼に頼って身の回りの空間を知る。ヒゲと眼からは性質の異なる空間情報を得るが、身体の大きさが変化する成長期にはそれぞれの空間情報が食い違い、マウスが混乱してしまう可能性がある。しかしマウスがどうやって混乱を回避するのか、不明であった。そこで、4週齢のマウスにプリズム眼鏡をかけさせる、またはヒゲをパーマ液で曲げる操作をして、ヒゲと眼の空間情報をわざとずらした。1週間後に視覚野の反応を調べたところ、脳表面の特定の方向にだけ反応が抑え込まれた。その結果、ヒゲと眼の空間情報のブレを解消する方向に視覚地図が移動した。この視覚野の反応を抑え込む現象は、ヒゲ感覚と視覚の両方の感覚情報が交錯する後部頭頂連合野(PPC)という脳部位を破壊すると消失した。またPPCは移動縞刺激とヒゲ刺激を逆相にして加えると活動した。性質の異なる感覚をまとめる感覚連合機能は、これまでサルなど脳が発達した動物で研究されてきた。本研究の成果により遺伝子を操作する技術が既に確立したマウスでも、感覚連合機能を調べられるようになった。 我々が特に注目したのは、神経特異的な細胞接着因子であるプロトカドヘリンの機能である。プロトカドヘリンは特異的なクラスター構造によって多様性を有する。本年度はクラスター型プロトカドヘリンα(cPcdhα)の多様性の機能を検証するため、クラスター数が12種類から2種類に減少したマウス、即ち12種類のcPcdhαクラスターのうち、α2からα11までが欠損し、α1かα12のどちらかが発現するマウス(cPcdhα1,12マウス)の解析を行った。その結果、cPcdhα1,12マウスではプリズム装着時の視覚野抑圧が消失することが判った。また移動縞刺激とヒゲ刺激の逆相組み合わせによるPPCの活動も消失することが判った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は視覚入力とヒゲ入力という異なるモダリティの感覚情報を如何に連合するかを神経回路レベルで解析することを目的とする。後部頭頂連合野(PPC)を連合の責任部位として同定出来たのは大きな進歩であり、麻酔下のマウスでもPPCの活動をフラビン蛋白蛍光イメージングによって再現性良く、捉えることができた。またクラスター型プロトカドヘリンのクラスター数を減少させた遺伝子改変マウスでもPPCの応答が特異的に障害される結果が得られ、順調に研究は進んでいる。しかし、2光子顕微鏡によるPPC解析や部位特異的なプロトカドヘリンノックアウト実験などは進んでおらず、最終年度に向けて努力することが必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
2光子顕微鏡によるPPC解析や部位特異的なプロトカドヘリンノックアウト実験を中心に研究を進める。さらにPPCは視野内に提示された空間情報を保持する視覚的短期記憶を担うとされている。また視覚系連合野の腹側経路では図形の形状を保持する短期記憶が存在すると想定されている。これらの機能についても、cPcdhα1,12マウスでどのような異常があるのかを解析し、単にヒゲ入力と視覚入力の空間情報の統合だけでなく、視覚系連合野の機能全般に関する研究へと発展させる。
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