2011 Fiscal Year Annual Research Report
モデル生物を用いた生理活性リゾリン脂質機能の包括的研究
Project Area | Machineries of bioactive lipids in homeostasis and diseases |
Project/Area Number |
22116004
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
青木 淳賢 東北大学, 大学院・薬学研究科, 教授 (20250219)
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Keywords | リゾリン脂質 / ゼブラフィッシュ / マススペクトロメトリー / モデル生物 / メディエーター |
Research Abstract |
生理活性脂質の一群であるリゾリン脂質メディエーターは、様々な生理機能や病態機能に関与することが知られている。本研究では、リゾリン脂質の産生酵素や受容体以外に、これまで解析が困難であったトランスポーター、分解酵素、前駆体合成酵素等の関連分子の解析、さらにリゾリン脂質の高感度検出系を用いた解析を進めている。本年度は、液体高速クロマトグラフィーとマススペクトロメトリー(LC-MS/MS)を用いた高感度リゾリン脂質測定系を構築した。さらに、同様の技術を用いてリゾリン脂質の前駆体であるジアシルリン脂質測定系も構築した。このリゾリン脂質測定系を用いることで、毛髪形成時におけるリゾホスファチジン酸(LPA)の産生機構とその機能、血中におけるLPAの産生機構、新規リゾリン脂質メディエーターであるリゾホスファチジルスレオニンの検出、スフィンゴシン1リン酸(S1P)トランスポーターのリンパ球動態の制御について新たな知見を得ることができた。特に、毛髪形成におけるLPAの機能については、既存の育毛薬とは異なる細胞群(毛包の上皮細胞)を標的としており、新たな育毛薬の開発の基礎研究として意義深い。さらにヒトにおいてもLPAの産生機能欠損による先天性貧毛(脱毛)症を見出しており、これら患者の脱毛メカニズムを理解し創薬へと進める上で重要な研究である。ゼブラフィッシュを用いたリゾリン脂質の研究については、LPA産生酵素オートタキシンが血管形成に必須な役割を担っていること、この現象には主に2つのLPA受容体(LPA1とLPA4)が関与していることを見出した。オートタキシンはがん組織で高発現していることが知られており、がん細胞の増殖にオートタキシンが血管形成を介して促進的に作用することが示唆される。LPAのがん発生・進展における寄与については今後の研究課題であるが、本研究により血管形成における機能は着目すべき候補であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マススペクトロメトリーを用いた脂質測定系の開発とマウスを用いたリゾリン脂質関連遺伝子の解析は当初の計画以上に進展している。ゼブラフィッシュを用いたリゾリン脂質関連遺伝子の同定はやや遅れている。全体としては本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
マススペクトロメトリーを用いた脂質測定系は当初の計画以上に進展していることから、様々な病態時における脂質測定を進める。これにより、病態時に変動しうる脂質メディエーターを同定し、さらにそれが病態の進展にどう影響するかについて研究を行う。マウスを用いたリゾリン脂質関連遺伝子の解析は、予定通りに脂質メディエーター受容体欠損マウスを中心に解析を行う。ゼブラフィッシュからの情報を元に、受容体の二重欠損や三重欠損マウスの作製を進め、効率的な解析を目指す。
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