2011 Fiscal Year Annual Research Report
ホスホリパーゼA2分子群により制御される新しい脂質ネットワークの解析
Project Area | Machineries of bioactive lipids in homeostasis and diseases |
Project/Area Number |
22116005
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
村上 誠 財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, 副参事研究員 (60276607)
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Keywords | ホスホリパーゼA_2 / トランスジェニックマウス / ノックアウトマウス / 生体膜 / 脂質メタボロミクス / リン脂質 / 脂質メディエーター / 不飽和脂肪酸 |
Research Abstract |
本研究は、多数のホスホリパーゼA_2分子群の生体内機能ならびにそれが制御する新しい脂質代謝ネットワークの解明を目指すものである。本年度は、(1)sPLA2-Xの新しい機能、ならびに(2)マスト細胞と微小環境による新しい脂質メディエーター産生調節機構について、以下の研究成果を得た。 (1)sPLA_2-Xと恒常性維持(J Biol Chem,286,11616-11631)(J Biol Chem,286,11632-11648,2011) (1)体毛形成:sPLA_2-Xは毛周期の増殖期に呼応して毛包外根鞘に発現し、体毛形成の制御に関わる。このため欠損マウスは体毛増殖に遅延が生じ、過剰発現マウスは完全に脱毛する。 (2)消化:sPLA_2-Xは消化管粘膜細胞から内腔に分泌され、食餌リン脂質の消化に関わる。欠損マウスでは脂質の消化吸収が減少するため、体脂肪蓄積の減少を示す。 (3)神経:sPLA_2-Xは末梢神経線維に分布し、神経突起伸長を促進する。このため欠損マウスでは末梢性疼痛応答が軽減し、逆に過剰発現マウスでは痛覚が増大する。 (2)マスト細胞と細胞内PLA_2(J Biol Chem,286,37249-37263,2011) マスト細胞にはcPLA_2αとiPLA_2βが発現しているが、このうち前者がマスト細胞のアラキドン酸遊離に必須であり、後者は関わらない。マスト細胞のcPLA_2αにより遊離されたアラキドン酸は局所環境の線維芽細胞に受け渡され、mPGES-1により抗アレルギー性のPGE_2に代謝される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞外と細胞内のPLA_2分子種について新しい機能をいくつか解明し、国際的学術誌に報告した。加えて、今後の発展につながる新しい表現型を複数のPLA_2遺伝子改変マウスに見出しており、これが成就されればPLA_2研究の新しいパラダイムの創成につながることは間違いないと確信している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きPLA_2分子群の遺伝子改変マウスの解析を継続する。新しいPLA_2分子種の欠損マウスやConditional PLA_2欠損マウスの作成を進め、組織固有のPLA_2分子種の機能を明らかにしていく。領域内の研究員との連携を更に強固にし、マウスや抗体などの解析ツールを共有して、更に多様な生命現象へと展開を広げる。また、遺伝子改変マウスの解析結果をヒトに反映させるため、臨床医との連携を図る。
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