2013 Fiscal Year Annual Research Report
翻訳後修飾によるNFーkB活性化シグナルの制御機構と疾患発症との関連
Project Area | Regulation of signal transduction by post-translational modifications and its pathogenic dysregulation |
Project/Area Number |
22117002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 純一郎 東京大学, 医科学研究所, 教授 (70176428)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾山 大明 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (30422398)
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Project Period (FY) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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Keywords | ユビキチン / シグナル伝達 / 構造生物学 / 数理モデル / 質量分析 |
Research Abstract |
1)p47のコンディショナルノックアウトマウスを作成した。骨髄細胞をM-CSFおよびRANKL刺激により破骨細胞分化を誘導したところp47欠損により分化が抑制された。2)前年度までにTax 存在下にIKK複合体に結合し、サイトカインによるNF-κB活性化には影響を与えずTaxによるNF-κB活性化のみを促進するタンパク質を見出した。このタンパク質は、TaxとIKK複合体との結合を促進する機能を持つことが明らかになった。また、TaxによるIKK活性化には、K63型ユビキチン鎖の形成が必須であるが十分ではないことが明らかになった。3)E3酵素として機能するcIAP1がユビキチン編集酵素であるA20と結合することを明らかにした。さらにA20がTRAF2とTRAF3の相互作用を阻害することでcIAPによるNIKの恒常的な分解が抑制し非古典的経路の活性化を促進することが明らかになった。4)Basal型乳癌細胞株においてNF-κBの活性化が、がん幹細胞分画の顕著な増大を誘導することをこれまでに明らかにした。今年度は臨床検体の遺伝子発現データベースを用いてBasal型乳癌でNF-κB標的遺伝子の高発現、JAG1とNF-κB標的遺伝子の発現相関、JAG1高発現患者における高頻度の転移等を示唆する結果を得た。即ち、モデルが臨床検体においても当てはまることを強く示唆する結果が得られた。5)K63型ユビキチン鎖に結合するペプチドを合成し、そのペプチドを共有結合させたアフィニティーカラムを用いて細胞破壊液からユビキチン化タンパク質分画を得た。6)LTbRの刺激によりRelBの核内濃度が約90分の周期で振動することを見出したが、この振動はレプトマイシンで阻害されることからCRM1を介したタンパク質の核外輸送が関与していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TaxによるIKK活性化には、K63型ユビキチン鎖の形成が必須であるがそれだけでは不十分であること、そしてNF-κBの非古典的経路の活性化にE3酵素であるcIAP1がユビキチン編集酵素であるA20と結合することが関与していることを発見したのは大きな成果であり、ほぼ順調に目的を達成できたことを示している。さらに疾患との関連では、細胞株の解析から見出した乳癌幹細胞の維持におけるNF-κB活性化の役割が、臨床検体の遺伝子発現解析から実際のがんでも当てはまることを強く示唆できたことはこの分野の進展に大きく貢献したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)翻訳後修飾による新たなシグナル制御機構解明: TaxによるNF-κB活性化は白血病発症に深く関与しながらその分子機構は解明されていない。今年度Taxを加えることでK63型ポリユビキチン鎖が形成されることを明らかにしたが、K63型以外のユビキチン鎖も関与していることを示唆する結果を得ている。どのようなユビキチン鎖が関与しているのか解明する。またこのユビキチン鎖の合成に関与する因子を同定する。A20が非古典的経路に関与していることが明らかになったが、その分子機構や特に刺激の種類によるA20依存性の違いは説明できていない。A20が形成する複合体の構成因子を解析し、非古典的経路の活性化機構を解明する。 2)未知の翻訳後修飾の同定を念頭においた基盤技術の導入:NF-κBの時空間的挙動をモニターするシステムの確立のため、RelB-Venusのノックインマウスから細胞株を樹立し、リンホトキシン刺激依存的にRelBが核移行と核外移行を繰り返し周期約90分のオシレーショをすることを既に見出しており、今年度さらに核外放出機構の一端が明らかになった。今後は、RelBに依存した転写制御とオシレーションとの関係を明らかにしてする。 3)遺伝子改変マウスを用いた疾患との関連解明:本研究で同定した新規の負の制御タンパク質p47のノックアウトマウスを解析しp47欠損によりin vitroの破骨細胞分化が抑制されることが明らかになった。今後、RANKシグナル経路を解析して抑制の分子機構の解明を目指すとともにマウスの骨密度等の解析からp47のin vivoでの骨代謝に機能を明らかにする。
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