2012 Fiscal Year Annual Research Report
Regulation of MAPK pathways by protein sumoylation and O-GlcNAcylation and its dysregulation in human diseases
Project Area | Regulation of signal transduction by post-translational modifications and its pathogenic dysregulation |
Project/Area Number |
22117003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
武川 睦寛 東京大学, 医科学研究所, 教授 (30322332)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨田 太一郎 東京大学, 医科学研究所, 助教 (70396886)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | シグナル伝達 / MAPキナーゼ / 癌 / ストレス応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.蛋白質SUMO化によるERK経路の活性化制御機構と癌におけるその破綻 ERK経路の新たな活性調節機構として、MEK(MAPKK)が細胞内でSUMO化される事を見出し、更にMEKのSUMO化がERK経路の過剰な活性化を防いで発癌阻止に作用する事を明らかにした。また癌遺伝子Rasが、MEKのSUMO化を抑制する作用を持つ事を見出し、実際にRasに変異を有する癌細胞ではMEKのSUMO化が消失している事を確認した。更に活性型RasによるMEK-SUMO化阻害機構に関しても解析を行い、癌遺伝子RasがMEKのSUMO-E3であるMEKK1に直接結合して、そのリガーゼ活性を阻害する事を明らかにした。また、Ras以外の特定の癌遺伝子によってもMEKのSUMO化が阻害される事を見出した。 2.ストレス応答MAPK経路による染色体安定性保持機構 ストレス刺激に応答して、ストレス応答MAPKKKがPLK(中心体複製に必須のキナーゼ)を直接リン酸化して活性化する事を見出した。またMAPKKKによるPLKの活性化が、ストレス誘導アポトーシスを抑制する作用を持つ事を示した。即ちストレス応答MAPKKKは、MAPKKを活性化するのみならず、同時にPLKをも活性化して、ストレスに曝された細胞のアポトーシス制御と染色体安定性保持に直接的な役割を果たしている事を明らかにした。更に癌細胞で認められるMKK4の機能喪失変異によって、ストレス刺激後のSAPK経路とPLK経路の活性化のバランスが破綻し、中心体の過剰複製と染色体異常が惹起される事を明らかにした。 3.ERKの新規基質分子の同定と生理機能の解明 ERKの基質分子を網羅的に同定する新たなスクリーニングシステムを開発し、機能未知の新規基質分子を単離する事に成功した。更にこの分子が、癌の転移に重要な上皮間葉転換の制御に関与する事を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SUMO化によるMEK活性の制御に関しては、極めて順調に研究が進行しており、当初目標であった「MEKのSUMO化を担うE3リガーゼ、及び脱SUMO化を担うプロテアーゼの同定」という目標を既に達成し、E3としてMEKK1を、またプロテアーゼとして特定のSENP分子を同定することに成功した。さらに癌遺伝子Rasが、MEKK1のE3活性を阻害して、MEKのSUMO化を抑制する機能を持つ事を明らかにし、論文発表した(Nat Cell Biol,13,282)。この成果はScience Signaling誌のEditor’s choice欄で紹介されると共に、Faculty of 1000のmust read paperにも選ばれた。 一方、O-GlcNAc化の研究に関しては、今年度までに新たなO-GlcNAc化蛋白質として複数のシグナル伝達分子を同定することに成功した。しかしながら、O-GlcNAc化研究における最大の問題点として、未だ充分な解析技術が確立されていない点が挙げられる。そこで我々はまず、蛋白質のO-GlcNAc化を定量的・生化学的に解析する基盤技術の開発を行った。その結果、これまでに3つの新たなO-GlcNAc化解析技術の開発に成功している。今後これらの新技術を利用することで、O-GlcNAc化の研究が飛躍的に進むものと期待している。 また、本研究を推進する過程で、ストレス応答MAKKKによる中心体制御、ERKの新規基質分子による上皮間葉転換の制御など、研究開始当初には予期していなかった複数の新知見が得られており、今後も研究の更なる発展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者がこれまでに得た知見を基に、SUMO化/O-GlcNAc化/リン酸化/酸化などの翻訳後修飾によるMAPK経路の制御メカニズムを分子レベルで解明する研究を推進し、細胞運命決定(増殖、分化や死)におけるMAPK経路の役割を明らかにする。また、未知のシグナル伝達分子や翻訳後修飾を同定するスクリーニング実験なども積極的に実施し、新たなシグナル伝達制御機構の解明を目指す。更に、遺伝子欠損マウスや翻訳後修飾サイトに変異を持つノックインマウスを作成し、シグナル伝達および翻訳後修飾の異常が、癌、自己免疫疾患や神経変性疾患を始めとする難治性疾患の発症や病態形成に果たす役割を個体レベルでも明らかにする。
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Remarks |
http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/dcsmm/DCSMM/Top.html
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Research Products
(26 results)