2013 Fiscal Year Annual Research Report
造血細胞分化における染色体修飾と転写因子のクロストーク
Project Area | Molecular mechanisms of cell fate determination in the cells that undergo stepwise differentiation to multiple pathways |
Project/Area Number |
22118002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北村 俊雄 東京大学, 医科学研究所, 教授 (20282527)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阪上 朝子 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (90462689)
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Project Period (FY) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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Keywords | 遺伝子 |
Research Abstract |
1) TET2、EZH2あるいはASXL1の変異体を導入した骨髄細胞を移植したマウスは骨髄異形成症候群(MDS)様疾患を発症し一部は白血病に移行した(Inoue et al. J Clin Invest, 2013および未発表データ)。ASXL1変異体はC末側を欠失しているが、その過剰発現は細胞株の好中球分化を抑制すること、またEZH2に結合し、ヒストンH3K27のトリメチル化を抑制することにより、HoxA5、HoxA9、HoxA10、miR125aなどの遺伝子の脱抑制を介して細胞分化を抑制し細胞のトランスフォーメーションを誘導することを明らかにした。さらに、miR125aはレクチン様レセプターであるClec5aの発現を抑制することを介して細胞分化抑制をすることを示唆した。 2) 細胞増殖抑制効果を有しないp27の変異体(p27K-)をmVenusに繋いだ融合蛋白質(p27K-)を利用して細胞周期静止期(G0期)に存在する細胞を特異的に染色する方法を開発した(Oki et al. Scientific Reports, 2013)。さらに生体内において幹細胞がG0期にあるかを調べるために、CAGプロモーターを利用してトランスジェニックマウスを作製した。しかしながら造血系細胞での発現が弱く造血幹細胞での解析はできなかった。筋肉細胞などでは発現が認められ、確かに筋肉の幹細胞あるいは前駆細胞にはG0マーカー(mVenus-p27K-)の発現が認められた。今後、造血細胞でもい解析ができるよう、p27K-のRosa26ノックインマウスを作製した。 3) 骨髄細胞にHes1を導入した細胞株の分化をC/EBPaやPU.1の発現で誘導する系を樹立し、細胞分化とエピジェネティクス変化の関係を調べる実験を行なったが、細胞株が安定して分化できないという問題があり、HL60細胞と32D細胞の系に切り替えて分化誘導実験を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の3つのプロジェクトを推進した。1)「細胞分化異常と骨髄異形成症候群(MDS)の発症機序」最近、種々のエピジェネティック因子の異常がMDSで見つかった。そのなかでも頻度が高いTET2、ASXL1、EZH2の遺伝子変異について研究を行った。これらの変異遺伝子を導入したマウス骨髄細胞を移植したマウスは長い潜伏期間を経てMDA様の疾患を発症し、一部は白血病に移行した。このうち、ASXL1変異についてはMDS発症機構に関与する分子機構の一端を明らかにした。ASXL1変異はEZH2/PRC2の抑制からHoxA9とmiR125aの脱抑制を誘導し、miR125aはミエロイド系分化に重要なClec5aの発現を抑制した。さらに興味深いことに発症したMDSはDNAメチル化阻害剤が有効であった。このプロジェクトは予想以上の成果が得られた。2)「細胞周期G0マーカーの開発」p27の変異体と蛍光蛋白質の融合蛋白質を利用して、細胞周期G0(静止期)にある細胞を特異的に染色する系を樹立した。さらに融合蛋白質を発現するトランスジェニックマウスを樹立し、筋肉の前駆細胞を特異的に染色することに成功した。この実験については計画通り順調に進んでいる。3)「ミエロイド系細胞の分化制御」造血前駆細胞に転写抑制因子Hes1を発現することによって分化をブロックした細胞株を利用してC/EBPaやPU1による細胞分化を研究することを試みたが、分化は誘導できるものの死細胞が多く、生化学的な実験に向かない実験系であった。そこでC/EBPaおよびPU1の活性をタモキシフェンで誘導できる系を導入したが、あまり変わらなかった。このプロジェクトについては実験が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)「細胞分化とMDS発症機序」ASXL1変異によりDNAメチル化異常が誘導される分子機構を明らかにし、細胞分化との関係を解析する。2)「細胞周期G0マーカーの開発」CAGプロモーターを利用したG0マーカーのトランスジェニックマウスでは造血系細胞での発現が低かった。そこでRosa26座へのノックインマウスを樹立して造血幹細胞の細胞周期を解析する。3)「ミエロイド系細胞の分化制御」正常骨髄細胞の代わりに、HL60や32Dなどミエロイド系に分化する細胞株を利用する実験を行う。既に変異型ASXL1によりHL60の好中球分化を抑制することを確認したが、この分子機構を調べる。また、単球系細胞への分化についても解析する。
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Research Products
(21 results)