2012 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular mechanism of stomatal movements in response to the environmental stimuli
Project Area | Integrated analysis of strategies for plant survival and growth in response to global environmental changes |
Project/Area Number |
22119005
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
木下 俊則 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50271101)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 気孔孔辺細胞 / 青色光 / オーキシン / アブシジン酸 / 細胞膜プロトンポンプ / フォトトロピン / シロイヌナズナ / ゼニゴケ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のスクリーニングによって単離した気孔開度変異体の解析により、新たに5系統の原因遺伝子を同定した。そのうちの一つであるlost1変異体の原因遺伝子はCHLI1であり、クロロフィル合成に関わる酵素であるが、気孔開度調節への関与が明らかとなった。また、青色光による孔辺細胞の細胞膜H+-ATPaseリン酸化を指標に単離したibp1変異体の原因遺伝子は、オーキシン排出輸送体として知られるPIN1の変異体であることが明らかとなった。この結果は、正常な青色光による孔辺細胞の細胞膜H+-ATPaseリン酸化に植物ホルモン・オーキシンが関与することを初めて示唆するものである。これらの結果については、現在、投稿に向けての準備を進めている。その他の変異体についても、原因遺伝子の同定および、その機能解析を進めている。 さらに、これまでの研究により明らかとなってきた光周性経路による気孔開度調節の解析を進め、この経路には、青色光受容体クリプトクロム、光周性花成誘導経路の主要因子であるGIとCO、さらにFTのホモログであるTSFが関与することを明らかにし、国際誌Plant Physiologyに投稿し、現在改訂中である。 加えて、細胞膜H+-ATPaseについて進化的視点を取り入れた解析を領域内共同研究として行い、維管束植物の持つH+-ATPaseは、植物が陸上に進化する過程で獲得され、リン酸化による活性制御が始まったことを明らかにした。また、ゼニゴケでは、光合成に依存してH+-ATPaseが活性化されることを見出し、この反応がH+-ATPaseの進化上初めての制御機構であることを示した。これらの結果は、国際誌Plant Physiologyに掲載された。さらに、維管束植物であるシロイヌナズナにおいても、光合成に依存してH+-ATPaseが活性化されることを見出し、現在解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
光周性経路による気孔開度調節という新たな調節機構を発見し、植物の栄養成長から生殖成長への相転換における気孔の役割について、既存の概念の転換を促す成果が得られたこと。さらに、クロロフィル合成酵素CHLI1や植物ホルモン・オーキシンの気孔開度調節への関与、免疫組織化学染色法による遺伝学的スクリーニング法の確立、細胞膜H+-ATPaseの進化的起源の解明など多くの学術上重要な成果が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
気孔開度変異体の解析において、多くの新奇因子がわかってきており、これらの機能解析を重点的に進めていく。また、気孔開度変異体の研究で明らかとなった知見を利用し、人為的に気孔開度を調節した植物体の作出にも取り組み、環境変動における気孔の役割を明確にしていきたい。さらに、本研究により新たに明らかとなった陸上植物に共通して観察される光合成による細胞膜H+-ATPaseの活性調節機構とその生理的意義の解明に向けて、従来の生理・生化学的手法に加え、遺伝学的スクリーニングなどの手法を取り入れて進めていきたい。
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Research Products
(35 results)