2011 Fiscal Year Annual Research Report
フェムト秒レーザーを駆使した植物細胞の局所操作と刺激法の開発
Project Area | Environmental sensing of plants: Signal perception, processing and cellular responses |
Project/Area Number |
22120010
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
細川 陽一郎 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 特任准教授 (20448088)
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Keywords | フェムト秒レーザー / 植物細胞 / レーザーマイクロダイセクション / レーザー細胞操作 / レーザー衝撃波 |
Research Abstract |
高強度のフェムト秒レーザーを顕微鏡で集光した時、集光点で多光子吸収が引き起こされ、さらには切断現象や爆発現象が引き起こされる。本研究では、この局所的な切断現象や爆発現象を駆使し、生きた植物組織のレーザーマイクロダイセクションを実現し、さらには単一レベルの植物細胞の機能制御を目指している。本年度、フェムト秒レーザーが導入できる共焦点蛍光顕微鏡システムを開発した。細胞核、細胞膜、小胞体などのオルガネラを緑色蛍光蛋白質により蛍光染色されたシロイヌナズナを試料として用い、細胞内を局所的に加工する実験を実施した。この実験系により細胞に外部損傷を与えず細胞内のオルガネラを加工できることを示した。例えば、細胞核を染色したシロイヌナズナの細胞に対し、細胞核にフェムト秒レーザーを集光して加工をおこない、細胞壁を傷つけずに、細胞内の細胞核を加工することに成功した。また細胞壁の局所にレーザーを集光照射したとき、細胞壁が損傷を受けない条件でも細胞全体が縮小することを発見した。植物細胞は外圧よりも高い状態で細胞内の圧力を保つことにより、その形状を維持している。また主に脂質分子で構成される細胞膜は、セルロースで形成されている細胞壁よりも機械強度が低く、フェムト秒レーザーの集光点で誘導される爆発現象により、細胞壁に比べて簡単に崩壊すると考えられる。つまり、レーザー照射により誘導された植物細胞の縮小は、細胞壁が保たれたまま細胞膜のみが損傷し、そこから細胞内の水分子が流出した可能性を示すものである。今後、細胞外の圧力を物理的に制御するシステムを構築し、植物壁を破壊しないで植物細胞内の物質の流出入を制御する新手法を確立していきたいと考えている。さらに、-10℃まで冷却できる顕微鏡ステージを開発し、レーザー照射による気泡発生を抑制しながら、乾燥していない植物試料を高精度にマイクロダイセクションすることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、新学術領域研究(総括:長谷あきら)に属する植物学研究者と密に交流を図ることができ、申請者が植物生理について、植物学研究者がレーザーについての理解を深めたため、新しい研究のアイディアが大きく膨らんだ。その結果、当初計画で予定していた従来方法の延長にあるレーザー利用とは根本的に異なる可能性が広がろうとしている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後さらに、植物学研究者との交流を深め、フェムト秒レーザーによるマイクロダイセクションや単一レベルの植物細胞の機能制御を、共同研究により具体的なものとし、ターゲットを絞って更に展開させていく。
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