2013 Fiscal Year Annual Research Report
クロマチンリモデリング制御複合体の構造と機能の解析
Project Area | Structural basis of cell-signalling complexes mediating signal perception, transduction and responses |
Project/Area Number |
22121005
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
千田 俊哉 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (30272868)
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Project Period (FY) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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Keywords | X線結晶構造解析 / クロマチン / ヌクレオソーム / 転写 / 複製 / CAF-I / HIRA |
Research Abstract |
本申請においては、(1) CAF-I, HIRAの立体構造解析、及びCAF-I, HIRAとCIA, H3-H4との複合体の構造解析、(2) エピジェネティック機構の解明、という目標を立て、昨年度までに昆虫細胞や大腸菌でのCAF-I, HIRAの大量発現系・大量精製系の構築を試みてきた。 CAF-Iはp150, p60, p48という3種類のサブユニットから構成されるヘテロ三量体であるが、今年度、CAF-Iについては、ヒトCAF-Iの3つのサブユニットについて、昆虫細胞での大量発現系・大量精製系の確立を行った。精製はHisTrap、ハイドロキシアパタイト、ゲル濾過を用いて行った。これらの精製標品について、電子顕微鏡により負染色像を観察した結果、ヒトCAF-Iと思われるおよそ10nmの粒子が検出された。しかし現状では、サイズがやや小さい粒子も多数検出されており、いくつかのサブユニットが解離していることが想定された。そのため、結晶化にはさらなる精製条件の検討(又は複合体の安定化条件の探索)が必要であると考えている。なお、CAF-IをヒストンH3-H4と混合した後に、ゲル濾過カラムにて精製すると、CAF-I複合体が安定化されているような結果(電子顕微鏡による負染色像観察)が得られた。この結果から、H3-H4の添加によりCAF-I複合体を安定化できると考えている。これと並行して、出芽酵母から内在性のCAF-I複合体を部分精製することにも成功している。 HIRAについては、単独での発現・精製が困難なようなので、生物種の変更、相互作用因子との共発現・共結晶化や、一部ドメインの発現・結晶化を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトCAF-I複合体について、大量発現系・大量精製系を確立し、電子顕微鏡による負染色像観察を行った点は当初計画通りである。これに加えて、ヒストンH3-H4との相互作用によって、CAF-I複合体が安定化し得ることを見出した点は予想外の成果であり、当初の計画以上に進展していると考えている。 また、リコンビナントタンパク質を用いて複合体を再構成する際には、「再構成した複合体は生体内での状態を反映しているのか?」という点が常に問題となるが、その問いに対して、昆虫細胞から精製したリコンビナント複合体と、今回部分精製に成功した内在性複合体を比較することで回答できると考えている。これは当初想定していた以上の成果であり、当初の計画以上に進展していると考えている。 HIRAについては単独での発現や精製が極めて困難であり、現在、何らかの手段でHIRAを安定に発現・精製できないか、生物種の変更や共発現などの方法を模索している最中である。またオプションとして部分構造の決定についても進行させている。この点は当初想定していた計画よりも進展が緩やかである。 以上の進捗から総合判断して、現在までの達成度を(2) おおむね順調に進展している、と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトCAF-I複合体については、これまでと同様に、昆虫細胞においてリコンビナントタンパク質を共発現し、複合体を精製する。また、CAF-Iの安定化因子であるヒストンH3-H4は大腸菌からリコンビナントタンパク質を精製し、複合体を再構成する。なお、ヒストンH3-H4の再構成は透析によるリフォールディングにより行っているが、リフォールディング効率が良いとは言えないため、並行して共発現によるH3-H4複合体の再構成も試みる。以上のようにして精製したCAF-IとH3-H4を混合して、CAF-I-H3-H4複合体の再構成を試みる。これらのサンプルは、電子顕微鏡による単粒子解析・結晶化に用いる計画である。 同時に、出芽酵母から内在性のCAF-I複合体の精製を行い、電子顕微鏡による負染色像観察に用いる。ただし、出芽酵母CAF-Iについては粒子径に不均一性が見られるため、ゲル濾過カラム・イオン交換カラム・ヘパリンカラムなどによる精製によって均一性の向上を試みる。 HIRAについては、単独での発現・精製が困難と思われるので、既知の相互作用因子(Cabin1, UBN1など)との共発現・共結晶化や、一部ドメインの発現・結晶化を検討している。
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Research Products
(6 results)