2013 Fiscal Year Annual Research Report
シグナル抑制因子CBLの分子複合体構造と病因変異の解析
Project Area | Structural basis of cell-signalling complexes mediating signal perception, transduction and responses |
Project/Area Number |
22121008
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
稲垣 冬彦 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 特任教授 (70011757)
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Project Period (FY) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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Keywords | チロシンキナーゼ / 過渡的複合体 / 同位体ラベル / NMR / ドッキング計算 / 架橋実験 |
Research Abstract |
平成24年度に確立したFGFR1の発現方法を平成25年度においてさらに発展させ、cMet, Mer受容体型チロシンキナーゼ、Src, Abl等の非受容体型チロシンキナーゼに適用し、大腸菌による大量発現調製法を確立した。これまではチロシンキナーゼ活性を保持した標品はバキュロウィルスによる発現系のみで可能であったが、今回の調製方法により大腸菌を用いても活性の高いチロシンキナーゼを大量に調製できることを確認した。今回得られた発現方法はチロシンキナーゼ研究のブレークスルーと考えられる。 チロシンキナーゼは二量体を形成するが、それぞれのチロシンキナーゼが基質、酵素の関係で互いにリン酸化を行なう。興味深いことに、複数の部位に存在するチロシンが逐次リン酸化されることによりチロシンリン酸化活性は1,000倍以上に昂進することが知られている。本研究では最初のリン酸化過程である活性化ループのチロシンリン酸化の機構を明らかにすることを目的とした。まず、FGFR1の15N均一ラベル体を作成しNMRスペクトルを解析した結果、活性化ループをたがいに活性中心に提示した二量体構造が形成される可能性が示された。そこで、架橋が可能と思われるCys 変異体を10種類作成し架橋実験を行った結果、A488C, K523C, E707C変異体がホモで二量体形成を行うこと、さらにA488C-K523C、R675C-E707Cの二量体を形成することがわかった。これらの結果を考慮してドッキング計算を行った結果、パラレルな配向をとった二量体構造をとることが確認できた。この二量体構造に基づき、界面に存在する塩基性残基にたいし、変異実験を行った結果、顕著にキナーゼ活性を失う変異体を見いだした。以上の結果を考慮に入れることにより、FGDR1の二量体構造の精密化を行うとともに、キナーゼ活性との関連を明らかにできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
FGFR1ばかりでなく他のチロシンキナーゼについても大腸菌を用いて活性の高い標品を得ることができた。この方法を用いてFGFR1のチロシンリン酸化の機構を解析できるようになった点は特筆すべき点である。 チロシンキナーゼの最初の活性化に必要な活性化ループのチロシンのリン酸化に関わる二量体構造を明らかにすることができた。これにより、チロシンキナーゼの活性化機構の概要が明らかにできた。本研究はチロシンキナーゼの活性化機構の分子機構を明らかにした点で評価の高い研究と判断している。平成26年度には今回の成果を論文年国際て学術誌に発表を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の手法を用いることにより、チロシンキナーゼの特定のチロシンのリン酸化に対応する二量体構造を明らかにできる。よって、チロシンキナーゼの活性化機構の解明が可能となる。ガン変異と言われている変異がいかなる構造変化を誘起するか、そしてチロシンキナーゼ活性をいかにして亢進するか興味深い研究課題である。また、ガン変異体に対する有効な阻害剤を明らかにすることも今後重要な研究となる。以上、創薬ターゲットとしてのチロシンキナーゼの役割および阻害剤の探索について今後研究を推進する。
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Research Products
(7 results)