2011 Fiscal Year Annual Research Report
血管-神経ネットワークの形成・維持に関わる相互依存性
Project Area | Vasculo-neural wiring and their interdependent crosstalk |
Project/Area Number |
22122004
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
高橋 淑子 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (10183857)
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Keywords | 血管 / 脊髄 / 神経堤細胞 / 相互作用 / VEGF / BMP / 背側大動脈 / 交感神経 |
Research Abstract |
血管網と神経網が生体内の二大ネットワークとして機能する際、両者間には双方向のシグナルが働き(血管-神経ワイヤリング)、これらのシグナルの破錠は、血管-神経ネットワークの形成不全、そして神経退縮や高次機能障害を引き起こす原因の一つと考えられている。本研究では、血管-神経ワイヤリングの形成機構とその意義について、細胞から器官レベルまで横断的に解析することを目的としている。本年度は、(1)中枢神経と(2)末梢神経を対象にして、それぞれ以下の研究を実施した。 1. 中枢神経と血管:これまでに、発生中の脊髄は血管が走向する領域としない領域に区別されること、またこの違いが神経細胞の未分化性と深く関わる可能性を見出している。本年度は、脊髄内における神経と血管との相互作用を実験的に明らかにするため、特に、VEGFの活性を中心とした解析を進めた。VEGFmRNAは脊髄内の未分化層で発現が見られるにもかかわらず、未分化層には血管形成が起こらないことから、VEGFの機能を抑制する何らかの因子の存在が考えられる。現在、DeltaやNeuroMのVEGF活性に与える影響を解析しており、NeuroMとVEGFとの相互作用の可能性が見え始めてきた。 2. 末梢神経と血管: 胚内を移動する末梢神経前駆細胞であるNeural Crest細胞(NC細胞)をモデルとして、NC細胞と血管との相互作用について解析を進めている。同一胚内でNC細胞と血管とを区別して遺伝子操作するという我々独自の方法論を駆使し、両者間の相互作用を調べた。その結果、背側大動脈から産生されるBMPが、NC細胞の移動に中心的な役割を持つことがわかった。さらに、NC細胞のLineage segregationにも背側大動脈因子が重要であり、NC細胞に由来する交感神経と副腎髄質とのsegregationのしくみの一端を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
末梢神経系におけるNC細胞と血管との相互作用に関しては、背側大動脈とそこから供給されるBMPを中心とした分子カスケードを明らかにできたことの意義は大きい。一方で、中枢神経系に関しては、未分化神経層におけるVEGF抑制因子がまだ明らかにできていないが、本年度の成果から候補分子がある程度絞れたので、今後の成果が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年4月より、研究代表者の研究室が京都大学へ異動したことに伴って、大量の機材の移設やラボの再セットアップなど、申請当時の計画とは異なるアクティビティが入ることとなった。またボスドクメンバーの交代などもあることから、本年度の当面の課題は、新しい場所で一刻も早く研究のリズムを取り戻すことである。また研究内容に関しては、現在絞られつつある血管-神経ワイヤリング候補因子の役割について、一つ一つ明らかにするというプロジェクトを続行する。
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