2012 Fiscal Year Annual Research Report
The study of limb regeneration ability in mammals
Project Area | Molecular mechanisms underlying reconstruction of 3D structers during regeneration |
Project/Area Number |
22124006
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
遠藤 哲也 愛知学院大学, 教養部, 講師 (90399816)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 再生生物学 / 四肢再生 / 哺乳類 / 両生類 / 創傷治癒 / 炎症 / 骨折治癒 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス四肢に再生芽形成を誘導できない原因を探るために、有尾両生類の四肢再生研究で用いられている過剰肢付加モデル実験(ALM)を行った。上腕部分の皮膚を部分的に切り取り、上腕神経の一部を先端で切断した後、神経の末端をこの創傷部へ配置した。両生類では、ここに再生芽が形成されるが、マウスの場合、再生芽は作られなかった。アフリカツメガエルALM実験の組織切片と比較したところ、ツメガエルでは創傷部に移植された神経から伸びてきた多数の軸索が、直上に形成された傷上皮に侵入していることが観察できたが、マウスの傷上皮では軸索はほとんど見ることができなかった。両生類において神経は、傷上皮を、再生芽形成を維持する再生上皮へと変化させることが分かっていることから、マウスでは神経が傷上皮に作用できないために再生上皮を形成できないことが、再生不能の原因である可能性が示唆された。 次にマウスにおける再生芽形成を誘導することを念頭に、ツメガエルの再生芽形成に関与する因子について調べた。Hhシグナルの阻害剤であるcyclopamineをツメガエルに投与したところ、スパイク形成が阻害された。またWntシグナルの活性化因子であるBIOをcyclopamineと共に投与したところ、再生芽は形成された。このことからHhシグナルの下流にWntシグナルが存在し、これによって再生芽が形成されることが示唆された。現在、マウスにBIOやHh活性化因子等を投与することで再生芽形成を起こすことができないか検討中である。 ツメガエルではHhシグナル阻害や除神経によって再生芽形成を阻害できるが、阻害後の四肢を調べると、骨の末端にマウスと同様に軟骨カルスが形成されていることが分かった。このことからマウスでは再生芽形成に付随した再生反応が起きないものの、神経非依存的な再生反応については、両生類と同様に起きていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスと両生類を比較再生生物学的に解析していく上で、両生類の再生機構の理解は不可欠である。またマウスにおいてパターンを持った四肢を再生させるために、まず第一に実現しなければならないのは、再生芽の形成である。両生類の四肢再生において再生芽形成の分子機構はかなり分かってきているものの、マウスへの応用を念頭に入れると、試薬などの投与によって人為的に操作が可能な実験系があることが望ましかった。今回HhシグナルやWntシグナルの阻害剤や活性化因子を用いることで、ツメガエルの再生芽形成を阻害するなどの操作をできることが分かった。これはそのままマウスの四肢に適用可能な試薬・手法であり、既にこの成果を応用してマウスに再生芽を形成させることができないかの試みを始めている。再生芽形成の実現へ向けて、利用できるシグナル系の選択肢が増えてきたことは、大変有意義である。 また両生類の四肢再生を神経依存的な反応と非依存的な反応に分けたとき、マウスにおいても神経非依存的な反応は起きていることが分かったことから、今後ターゲットにしていくべき現象が、神経依存的な現象であることが明確になった。これまでは、マウスの四肢再生を目指してどのようにアプローチをしていくかの手掛かりを探るために、様々な実験を試していくという方法をとらざるを得なかった。しかしターゲットとしていくべき現象・シグナル系が分かってきたことで、今後、それらに集中していくことが可能となる。そのため、本研究の残り2年間へ向けて、順調に進んでいるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
達成度の欄でも述べたように、まず今後は、これまでに分かってきた再生芽形成の関連因子や神経因子について、マウスへ積極的に応用していくことで再生芽形成の実現を目指していく。その上で、最終的には四肢パターンを再生させるという目標と共に、並行して、カエルのスパイク様の構造をマウスにおいて作らせることも目指していく。米国では、義手・義足を取り付ける土台として異所的な骨を作れないか興味を持った医療関係者がいるという情報を私信で得ており、スパイク様の構造をマウスでも作ることができるようになれば、こういった需要に答えられるだろうと考えたからである。これは本研究で得られた成果をどのようにして医療面へ応用していくかの、可能性の一つであると思われる。 今後は、本研究を単なる基礎研究で終わらせないためにも、医療分野ではどういったことが求められているかの需要を知り、また我々の研究成果がどの程度まで医療応用可能か、これまで以上に高く意識しつつ研究を進めていく方針である。そのためにも、本・新学術領域の公募班として参加される医療関係者や、今夏に行う予定である本領域のトレーニングコースに参加される医療関係者との連絡を密にとっていきたいと考えている。
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Research Products
(1 results)