2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Molecular mechanisms underlying reconstruction of 3D structers during regeneration |
Project/Area Number |
22124006
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
遠藤 哲也 愛知学院大学, 教養部, 講師 (90399816)
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Project Period (FY) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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Keywords | 再生生物学 / 四肢再生 / 哺乳類 / 両生類 / 創傷治癒 / 炎症 / 骨折治療 |
Research Abstract |
マウス四肢が切断に反応して再生芽を形成できないことの原因を探るために、以下の実験を行った。上腕部分の皮膚を部分的に切り取り、上腕神経の一部を肘レベルで切断して、その末端を創傷部へ配置すると、再生芽を形成するアフリカツメガエルでは創傷部に形成された傷上皮中に再生した神経軸索が侵入するが、再生しないマウスでは軸索の侵入が観察されない。そこで傷上皮におけるSema3Aタンパク質の分布を調べたところ、ツメガエル傷上皮には発現しておらず、マウス傷上皮には強発現していることが分かった。Sema3Aは神経軸索の反発因子であるため、マウスでは傷上皮で発現するSema3Aによって軸索の侵入が阻害されている可能性が示唆された。再生芽形成に必要な再生上皮ができるためには神経が傷上皮に作用しなければならないため、Sema3Aが発現していることが、マウス四肢において再生芽が形成されない原因の一つとなっているかも知れない。 次にマウスにおける再生芽形成を目標に、マウス四肢を切断した後の反応とツメガエル再生芽形成機構との比較を行った。今回はClodronate投与によるマクロファージの一時的除去が、二つの系にどのような影響をおよぼすかを比較した。Clodronate投与ツメガエルは、前肢を切断しても再生芽を作らず、通常は切断面付近で作られる骨肥大も見られなかった。同様にマウス成体にclodronateを投与し、後肢の第2指骨を切断した。この部分は切断しても再生できない部分であるが、切断された骨の末端には骨肥大が作られる。しかしclodronate投与個体では、骨肥大形成が起きなかった。これらのことから、まずツメガエルの再生芽形成には切断時におけるマクロファージの存在が必須であること、ツメガエル前肢とマウス第2指骨の切断時に見られる骨肥大形成にもマクロファージの存在が必要であり、骨肥大形成と再生芽形成にはマクロファージを介した共通の仕組みが存在することが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスにおいてパターンを持った四肢を再生させるために、再生芽形成を実現することを第一目標としている。そのために、マウスと再生芽形成モデル動物を比較していくことは不可欠である。これまで形態的特徴や細胞系譜を追跡した実験などより、切断されたマウスの骨の末端に形成される肥大と、ツメガエルのスパイク形成時に作られる骨肥大は相同なものであること、また骨肥大形成と再生芽形成が同じ分子メカニズムを共有している可能性が示唆された。このことはツメガエルのスパイクが、骨肥大の延長である可能性をも示唆すると考えており、マウスにおいてツメガエルのようなスパイクを作らせることを考える上で非常に有意義な結果であると思われる。現在は、ツメガエルにおいて骨肥大を先端部方向へ伸長させる上で重要な役割を果たしていると考えられる上皮組織AEC由来の因子をマウスに投与することで、骨肥大の伸長を促すことが出来ないかを検討している。 また25年度に得られた結果は、マクロファージを介したシグナル系が哺乳類の骨折治癒にも関与していることを示唆しており、本研究の目標の一つである医療との連携を考える上では、大変有意義であると考えている。 以上のことから本研究は、最終年度へ向けて、順調に進んでいるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度は本研究の最終年度であるため、これまでに分かってきた再生芽形成に関与する因子や、神経から分泌されることが分かっている因子をマウスへ投与することで、まずは再生芽を形成させる事を目指す。これまでにわずかながら再生芽様の間充織細胞の蓄積を観察できており、今後はその増殖を活性化すること、再生芽マーカーや位置価マーカー遺伝子の発現を誘導することが目標となる。特にマーカー遺伝子の発現は、これまでの単純な四肢切断実験においてはほとんど変化が見られない。これはこれらの遺伝子がエピジェネティックな発現制御を受けているからではないかと予想される。現在は、Trichostatin Aや5-azacytidineなどのエピゲノム修飾剤を用いて、マーカー遺伝子の発現変化を起こせる状況を作れないか検討しており、今後は再生芽誘導因子との組み合わせ実験を行っていく予定である。 またマーカー遺伝子発現の有無にかかわらず、骨分化能を持った再生芽を作らせることも検討している。これは短中期的にはツメガエルのスパイク様の骨構造をマウスに作らせた方が、骨折治癒などの医療応用に近いのではないか、との考えからである。これまでのところBMPが、切断面よりも先端部に骨組織を形成できることが分かっているが、カエルのスパイクとは形態的にも似ておらず、形をコントロールできているとは言い難い。今後は、ツメガエルのスパイク伸長に関わる因子の中から、さらに骨分化を促すことができる因子を見つけ、これをマウスに投与することで、スパイク様構造の形成を目指していく。
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[Journal Article] Growth and differentiation of a long bone in limb development, repair and regeneration2014
Author(s)
Egawa, S., Miura, S., Yokoyama, H., Endo, T., Tamura, K.
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Journal Title
Development, Growth and Differentiation
Volume: 未定
Pages: 未定
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Ectopic blastema induction by nerve deviation and skin wounding: A new regeneration model in Xenopus laevis2014
Author(s)
Mitogawa, K., Hirata, A., Moriyasu, M., Makanae, A., Miura, S., Endo, T., Satoh, A.
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Journal Title
Regeneration
Volume: 未定
Pages: 未定
Peer Reviewed
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