2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Systematic study of chromosome adaptation |
Project/Area Number |
22125002
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
篠原 彰 大阪大学, たんぱく質研究所, 教授 (00252578)
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Project Period (FY) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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Keywords | 組換え / 減数分裂 / 染色体 / 核膜 |
Research Abstract |
減数分裂では組換えにより、親由来のゲノム情報の混ぜ合せが起こるだけでなく、”新規のゲノム変動”が生じ、それが次世代の表現型に影響を与えること(ゲノムアダプテーション)が近年知られつつある。本研究は生殖細胞のゲノムの変動に関して2つの大きな目的をおいた。減数分裂期に生じる”新規のゲノム変化(突然変異)”や“新規エピゲノム情報”を正確に記載し、その分子レベルでの仕組みを酵母(やマウス)の系を用いて解析する。”新規のゲノム変化”はDNAチップや次世代DNAシークエンサを用いたゲノムワイドの解析を中心に行うことで、ゲノム全体や染色体ごとでのゲノムアダプテーションの俯瞰図を作成する。2つ目の目的はゲノムアダプテーションの原動力となる染色体運動の仕組みを理解することである。酵母で染色体を可視化する系を使い、染色体の動きと核膜の関係を捉え、その分子メカニズムとゲノム変動への影響を解明についての研究を実施している。本年度は減数分裂期のエピジェネテックマーカーであるヒストンH3K4のメチル化は減数分裂期の組換えの開始反応であるDNA2重鎖切断形成に関わることを新たに見出した。特にヒストンH3K4のメチル化に加えて、ヒストンH3K79のメチル化もDNA2重鎖切断形成に関わることを明らかにした。このヒストン修飾が減数分裂の組換えの分布の制御に重要であると考えている。また、減数分裂期では染色体の構造変化や運動が起こることが知られているが、その運動は染色体末端であるテロメアと核膜との結合とそこに形成されるタンパク質複合体が大切な役目を果たす。この過程では核膜に再局在するSUNドメインタンパク質のMps3が鍵を担う分子として知られている。Mps3がリン酸化を受けることで核膜のリモデリングを促進し、それにより染色体の機能に影響を与えることを示した。この結果は核膜の新しい機能を明らかにした点で意義が高い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のようにヒストン修飾が組換えを制御すること、核膜が減数分裂期の染色体の機能制御に関わることを明らかにしたことは大きな前進である。新しいヒストン修飾が組換えに関わることを示したことは、今後組換えの制御の仕組みを解明する点で大きな前進になると位置づけている。一方で,このヒストンの修飾がどのようなメカニズムで減数分裂期の組換えに関与するのかについての解析が今後の課題である。ヒストン修飾と結合する因子の同定が急務と考えている。また、核膜タンパク質のリン酸化、特に、核膜内膜と外膜の間に存在するルーメン領域でのリン酸化が起こることを明らかにしたことは非常に興味深い発見である。今後はこのリン酸化を担うキナーゼの同定を含めて、どのような仕組みでリン酸化が核膜の局在を保証するのかを明らかにすることが進展の鍵になる。さらに、このリン酸化の欠損変異が染色体の運動のみならず、染色体内部の反応、組換えなどに影響を与えるということを見出した点は、物理的な力(運動)が生化学的な反応(組換え)を制御するという新しい視点を生み出す可能性があり、今後の更なる解析が期待される。今後の研究の進展状況によっては、核膜の新しい機能、特に、染色体(核質)と細胞質を繋ぐ新しい細胞コミュニケーションの仕組みを明らかにする可能性を内包していると言える。核膜の機能は細胞生物学の中でも未知の要素が多いので,大きな展開も期待できるかもしれない。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は最終年度にあたるため,新しい研究を始めると言うよりはむしろこれまで4年間の成果を目に見えた形、つまり、論文で発表することが大切であると考えている。そのためには、論文作成に必要な研究に人材を集中することを計画している。一方、研究課題の中の柱である減数分裂期染色体上のタンパク質の分布の網羅的解析は少し遅れがでている。これは微量サンプルを扱う困難さ故のクロマチン免疫沈降法の再現性の難しさに起因している。原因が特定できているので、今後は解析を進めることが可能であると考えている。また、ゲノムワイドの解析は同じ計画班員である伊藤武彦博士や白髭克彦博士の協力をよりあおぐことで今年度内での方法論の確立と確固たるデータを生み出すことに集中する。 また、昨年度までの研究成果を踏まえて、減数分裂期の染色体運動の原動力と考えられる核膜のリモデリング、特に、その鍵分子であるMps3タンパク質のリン酸化反応の仕組みや、核膜のリモデリングに影響を与えると考えられる減数分裂期染色体構成要素の機能連携のメカニズムに焦点を当てることで、研究をより質の高いものにすることを予定している。一方、物理的な力が染色体上の反応を制御する仕組みは、上記で同定できた運動に欠損があり、かつ、組換えに特異的な欠損を持つ変異株の機能解析を徹底的に行うことで、分子レベルでの欠損を同定することに力を注ぐ。このような解析から分子メカニズムを仮説化するだけの情報が得られると期待している。
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[Journal Article] A new protein complex promoting the assembly of Rad51 filaments.2013
Author(s)
Sasanuma, H. Tawramoto, M.S., Lao, J., Hosaka, H., Sanda, E., Suzuki, M., Yamashita, E., Hunter, N., Shinohara M., Nakagawa, A. and A. Shinohara. A
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 4
Pages: 1676
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] The small GTPase Rab5 homologue Ypt5 regulates cell morphology, sexual development, iron-stress response and vacuolar formation in fission yeast.2013
Author(s)
Tsukamoto, Y., Katayama, C., Shinohara M., Shinohara, A., Maekawa, S. and Miyamoto M.
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Journal Title
Biochem. Biophys. Res Commun.
Volume: 441
Pages: 867-872
DOI
Peer Reviewed
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