2013 Fiscal Year Annual Research Report
分裂酵母の接合型変換におけるゲノムアダプテーションの分子基盤
Project Area | Systematic study of chromosome adaptation |
Project/Area Number |
22125003
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
岩崎 博史 東京工業大学, 生命理工学研究科, 教授 (60232659)
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Project Period (FY) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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Keywords | 接合型変換 / ヘテロクロマチン / 相同組換え / DNA二重鎖切断 / 分裂酵母 / Swi2-Swi5複合体 / Rad51 / ゲノムアダプテーション |
Research Abstract |
分裂酵母の接合型変換の素過程は、接合型決定座位( mat1 )とサイレントな座位(mat2, mat3 )との間での厳密な反応極性を有する遺伝子変換である。この極性制御は、サイレントな遺伝子座位でのヘテロクロマチンによる高度な制御(染色体コミュニケーション)と mat1 近傍のゲノム情報の世代を超えた発現(インプリンティング)が、深く関係している。本研究では、その反応機構の解明を目指している。 接合型変換時の遺伝子変換を行う中心的なタンパク質はRad51リコンビナーゼである。我々は、Rad51を制御する補助因子としてSwi2-Swi5複合体が働くことを明らかにしている。一方、一般的な組換えや組換え修復においては、Rad51補助因子として、Swi5-Sfr1複合体が働く。これまで、我々は、Swi5-Sfr1複合体の機能解析を行い大きな成果をあげてきた。Sfr1とSwi2は相同性を有しパラログ同士の関係にあることから、Swi2-Swi5複合体も、Swi5-Sfr1複合体と同様にRad51のDNA鎖交換活性の促進効果が予想される。 米国のグループの解析から,Swi2蛋白質の局在が接合型変換の方向性の制御を決定するというモデルが提唱されている。また、Swi2蛋白質が特に多く蓄積する領域としてmat3近傍の配列SRE3が知られている。 2013年度は、mat領域の染色体配置と接合型変換の関係性に注目した。まず、P株もしくはM株に固定されたヘテロタリック株のmat座におけるSwi2の局在をChip-Seqによって解析した。その結果、P株とM株において、Swi2の局在が大きくことなることを見いだした。また、この局在がSwi6に依存することも明らかにした。また、3C (Chromosome conformation capture) 法によってmat座位における染色体の配置を解析した。その結果、P株とM株で大きくことなる染色体配置であることが予想された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)mat座におけるSwi2蛋白質の局在:接合型変換に関わるシス因子SRE3 (Swi2-dependent Recombination Enhancer)は、mat3Mの下流に存在し、この領域に、Swi2が最初に結合する場所であると考えられていた。我々が、ChIP-seqで解析したところ、ホモタリックなh90株やヘテロタリックなP株でSRE3にSwi2の局在を認めたが、M株ではそれが減少し、あらたに、mat2近傍に局在する領域が存在することを明らかにした。この領域はデンマークのグループの提唱に倣いSRE2とする。また、h90でみられるSwi2のmat座における局在は、swi6欠損株では大きく現象することから、この局在はSwi6蛋白質に依存することがわかった。これまでに、酵母2ハイブリッドスクリーニングを行い、約50個の候補タンパク質が得られた。そのうちの一つとしてChp2蛋白質がある。この蛋白質は、Swi2のピークと共局在した。 (2) 3C法によって染色体の空間配置を解析して、P株とM 株で、染色体の空間配置がことなることを明らかにした。すなわち、2つの株では異なるループ構造をとっており、mat1とMat2もしくはmat3の空間的距離に違いを生み出していることがわかった。上記のSwi2の局在を合わせて、接合型変換の反応モデルを提唱した。 以上の成果は、年度計画に対して、おおむね順調に進展していると評価される。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)Swi2の局在解析:P株とM株におけるSwi2の局在の違いについて、さらに詳細にChip-Seq解析する。特に、i)この局在の違いが、Swi6などSwi2相互作用因子、ヘテロクロマチン構成因子、RNAi関連因子などに依存するのか、ii)細胞周期によってどのような違いが生じるのか、などを解析する。また、Swi2の局在のシス因子である、SRE2とSRE3の効果や機能分担について、この2カ所の片一方、もしくは、両方、欠失させたり、また、別場所に移植したりして、Swi2の局在を解析する。また、このようなSRE変異株の接合型変換能について、in vivoの解析も合わせて行う。 (2)3C解析:mat座における染色体配置について、さらに、詳しく解析する。特に、細胞周期によってどのように染色体配置が変わって行くのか、今後は時間分解能を上げた解析にトライする。また、同定したループ構造がシス配列に依存するのかどうか、その配列を欠損させたり、異所に移植したりさせた株を作成し、そのような株における染色体配置を解析する (3)接合型変換の試験管内再構成系と 一般的相同組換え機構とのメカニステックな違いについて:Swi2-Swi5複合体を安定的に再現性よく精製ができるよう、今後も改良を重ねる。また、精製したSwi2-Swi5複合体を用いて、Rad51依存的DNA鎖交換反応に対する促進効果を解析する。また、今年度も、Swi5-Sfr1複合体の機能解析を、本研究と併行して解析し、Swi2-Swi5とSwi5-Sfr1間の機能的な差違の根本原因を解明する。 最終年度になるので、以上の解析結果をそれぞれまとめて成果を論文として発表する。
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Research Products
(6 results)