2011 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノムアダプテーションにおけるストレス誘導性エピジェネティック変化の役割
Project Area | Systematic study of chromosome adaptation |
Project/Area Number |
22125005
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
石井 俊輔 独立行政法人理化学研究所, 石井分子遺伝学研究室, 主任研究員 (00124785)
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Keywords | ストレス / ATF-2 / エピジェネティック変化 / 遺伝 / ヘテロクロマチン / ヒストン / H3-K9メチル化 / 疾患 |
Research Abstract |
本研究では、様々なストレスにより生じるエピジェネティック変化が遺伝し得るか、また遺伝するとすればそのメカニズムを明らかにすることを目的としている。転写が不活発なヘテロクロマチン領域では、ヒストンH3-K9がメチル化されている。ショウジョウバエの眼の赤色色素の生合成に関与するwhite遺伝子がヘテロクロマチン領域に隣接すると、この遺伝子の転写が抑制され、眼が白いまだら状になる。ストレスにより活性化されることが知られている転写因子dATF-2の遺伝子の変異を、このような系統に導入すると、眼が赤くなり、ヘテロクロマチン構造が弛緩し、ヒストンのメチル化が低下することを見出した。これらの結果は、dATF-2がヒストンをメチル化する酵素と結合し、ヒストンをメチル化してヘテロクロマチン構造を形成し、転写を抑制することを示している。dATF-2をリン酸化し、転写因子としての働きを活性化する熱ショックストレスや浸透圧ストレスが、ヘテロクロマチン構造にどのような影響を及ぼすかを調べた。興味深いことに、これらのストレスが発生の初期段階で与えられると、dATF-2がヘテロクロマチンから外れ、ヘテロクロマチン構造が弛緩し、抑制されていた転写が誘導されること、またその状態は子供に遺伝することが分かった。親の世代だけが熱ショックストレスを受けると、その影響は子供にだけ遺伝し、孫には遺伝しないが、二世代にわたって熱ショックストレスを受けると、その影響は子供だけでなく孫にも伝わることが分かった。このように、ATF-2はストレスによるエピジェネティック変化の誘導とその遺伝に重要な役割を果たすことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
転写因子ATF-2を介して、ストレスによるエピジェネティック変化が誘導され、それが遺伝することを明らかにした。これはストレスによる遺伝子発現変化が遺伝するメカニズムを世界で初めて明らかにしたもので、今後の研究の発展の基礎となり得る。
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Strategy for Future Research Activity |
ストレスによるエピジェネティック変化の誘導とその遺伝において、転写因子ATF-2が重要な役割を果たすことが分かったので、予定通り、ChIP-Seq法によりATF-2が直接結合する標的遺伝子を同定する。そして、標的遺伝子がどのようなストレスで活性化されるかを明らかにし、ストレスによる遺伝子発現変化の遺伝を解析する。
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