2011 Fiscal Year Annual Research Report
肥満におけるアディポサイトカイン異常と病態発症機構の解析
Project Area | Molecular Basis and Disorders of Control of Apetite and Fat Accumulation |
Project/Area Number |
22126008
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
船橋 徹 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座教授 (60243234)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸田 堅 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座助教 (10437329)
|
Keywords | 内科 / 糖尿病 / 循環器・高血圧 |
Research Abstract |
2型糖尿病、動脈硬化疾患は現代の大きな健康問題である。本研究は肥満におけるアディポサイトカイン異常と病態発症機構を解明しようとするものである。本年度は全身血管プラーク評価を中心に解析した。2型糖尿病例に頚動脈、腎、大動脈、総腸骨動脈の血管プラークを定性的評価し罹患血管数によりプラークスコアを算出。63%が複数の血管にプラーク病変を有するpolyvascular disease(PVD)であった。 多変量解析ではPVDの存在が冠動脈疾患の予測因子となった。内臓脂肪蓄積に加え他のリスクファクターを有するメタボリックシンドローム(MetS)型は61%を占め、PVDの予測因子はMetSの存在であった。 さらにプラーク破綻をきたしやすいと考えられる低輝度プラーク(LDP)は、やはりMetS型が多く、血中S100A8-S100A9複合体,S100A8-S100A9複合体/adiponectuin比が高かった。 S100A8-S100A9複合体はカルプロテクチンと呼ばれtoll-like-4受容体に作用し動脈硬化症とも関連するとされる。人間ドック健診受診者500例で、血中S100A8-S100A9複合体濃度はBMI、内臓脂肪面積、皮下脂肪面積、白血球数と正相関した。マウスにおいて、S100A8、S100A9は脂肪組織に発現していた。 肥満マウスでmRNA量は増加したが、驚いたことにS100A8 mRNAは成熟脂肪細胞画分で、S100A9 mRNAはStromal vascular画分(macrophagesを含む)で高発現し、血中濃度の上昇を認めた。 脂肪組織内で異種細胞に由来する分子が複合体を形成し、脂肪組織炎症や流血を介し動脈硬化プラーク形成に関与する新たなアディポサイトカイン機構が示唆された。 アディポネクチンの臓器集積、血中タンパク結合性についても解析を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
大阪大学医学部附属病院内に設立された糖尿病・メタボリックステーションを活用することによって、前心血管エコー、内臓脂肪測定、新規アディポサイトカイン同定、生活指導が一貫して行えるようになり、特に内臓脂肪蓄積と動脈硬化病変の分析が急速に進んだ。臨床的知見のみでなく、S100A8/S100A9 complexのような新規アディポサイトカインが同定されるとともに、脂肪組織内で脂肪細胞とマクロファージそれぞれに由来する分子が複合体を形成して流血中に見出される新たなメカニズムの可能性が生まれた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は当初の計画にもあげていたアディポネクチンと流血分子の複合体解析、障害組織への集積に関する研究をおしすすめ、アディポネクチンというこれまでの内分泌因子とは概念の異なる分子の物性を明らかにして、わが国がリードしてきた「アディポネクチン学」の樹立に努める。
|
Research Products
(13 results)