2013 Fiscal Year Annual Research Report
肥満におけるエネルギー代謝調節ペプチドの病態生理学的意義の解析
Project Area | Molecular Basis and Disorders of Control of Apetite and Fat Accumulation |
Project/Area Number |
22126009
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
中里 雅光 宮崎大学, 医学部, 教授 (10180267)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 秀樹 宮崎大学, 医学部, 講師 (10305097)
十枝内 厚次 宮崎大学, 医学部, 講師 (80381101)
上野 浩晶 宮崎大学, 医学部, 助教 (00381062)
土持 若葉 宮崎大学, 医学部, 医員 (90573303)
坪内 拡伸 宮崎大学, 医学部, 医員 (60573988)
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Project Period (FY) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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Keywords | 視床下部 / ペプチド / 迷走神経 / 摂食 / 糖代謝 |
Research Abstract |
本年度は、迷走神経節の解剖学的特性と情報伝達機構における消化管ペプチド受容体の役割と肥満における迷走神経情報伝達システムの破綻について解析を行った。申請者らは、単一の迷走神経節神経が複数の臓器から情報を入力していることを突き止めた。これまで迷走神経の情報入力は複数の消化管ペプチドが混在し、かつ濃度が高い門脈から情報を入力していると考えられてきたが、単一神経が遠隔臓器である胃と小腸の情報を統合している事実は、迷走神経終末が消化管上皮にまで到達し、消化管の情報を受容していことから、申請者らが明らかにしたグレリンとGLP-1の摂食相互連関が、それぞれの受容体を共発現している細胞では可能であることを明らかにした。現在、迷走神経節特異的なグレリン受容体欠損マウスおよびGLP-1受容体欠損マウスの作出技術の確立に着手している。また、高脂肪食によって生じる肥満は、脂肪組織の炎症に伴う、脂肪細胞の肥大と組織内の血管新生の亢進によって齎される。しかし、高脂肪食と脂肪組織の炎症との間に解離があった。申請者らは、12週間の高脂肪摂取が、迷走神経に炎症を来たし、消化管由来の摂食関連ペプチドの受容体発現パターンが変化することを明らかにした。肥満マウスでは、グレリンの迷走神経求心活動の抑制作用が消失したことから、高脂肪食による迷走神経節の炎症が機能にも影響を与えることを示した。この炎症反応は、高脂肪食摂取後早期に生じることから、これまで報告された視床下部炎症の原因となる可能性があり、神経を介した炎症の伝搬という新たな概念の可能性を提示した。摂摂食調節破綻の分子機序解明に向けて、迷走神経機能の重要性を明らかにした。さらに中枢で機能する新たな摂食調節ペプチドをin silico解析によって同定し、その機能解析にも着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまで、迷走神経を用いたin vivo実験は、組織の脆弱性や物理的な大きさの制限により、ラットが中心であった。迷走神経の解剖学的特性や電気活動測定技術、迷走神経節特異的欠損動物の作製等、本年度明らかにした事実は、いずれもマウスによる成績であり、本研究の事実確認に不可欠な遺伝子改変動物を用いた実験を可能にした。肥満発症の原因として炎症の伝搬という新たな可能性を突き止めたことにより、次年度の研究の展開が明確になり、計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は新たに同定した中枢性摂食調節ペプチドの構造決定と機能解析を実施し、摂食調節神経回路での役割を同定する。また迷走神経機能と肥満の関係において、迷走神経節の受容体発現パターンが変化する原因の究明を目指す。高脂肪食による腸内細菌叢の比率変化によって生じる腸管内の代謝物の変化を迷走神経が受容している可能性について検討し、迷走神経節に生じる炎症との因果関係を明らかにする。さらに抗炎症作用を有する物質等の薬理作用や運動等の生活習慣改善による、摂食調節破綻の予防的介入法についても研究を実施する。
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