2012 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanism of failure of appetite regulating system in obesity
Project Area | Molecular Basis and Disorders of Control of Apetite and Fat Accumulation |
Project/Area Number |
22126010
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Research Institution | Takasaki University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
清水 弘行 高崎健康福祉大学, 公私立大学の部局等, 教授 (20251100)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ネスファチン / ミトコンドリア / 骨格筋 / 体重変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)神経性情報伝達機構異常による食欲調節機構破綻の解明 ネスファチン/ヌクレオビンディン-2 (NUCB2)と神経系との関わりに関して白色脂肪組織特異的に同蛋白発現が増加、その増加に交感神経系の抑制が重要であることが判明した。胃における同蛋白と神経系との関連は否定的であったが、肥満外科治療により血中ネスファチン-1濃度が減少することから、胃由来のネスファチン/NUCB2が中枢へのネスファチン-1の血中濃度を規定している可能性が示唆された。同蛋白の欠損マウスにて自発運動量低下を伴う酸素消費量増大やインスリン感受性の改善が認められ、同蛋白を抑制することが肥満症発症を抑制することが判明した。同蛋白の抑制が血圧を改善することも判明し、肥満症の重要な病態の一つである高血圧への食欲制御蛋白の発現の関連が示唆された。血管内皮細胞や腎集合管上皮細胞にも特異的に同蛋白が発現、パラクリン的に血管平滑筋細胞を収縮や腎集合管のナトリウムや水の再吸収を促進する機序の関与も推察された。 2)液性情報伝達機構異常による食欲調節機構破綻の解明 血液脳関門機能の修飾を介した肥満モデルの作成は、脳血管内皮細胞に特異的にオクルージンを過剰発現するマウスの作成がかなわず、これまでの検討にて脳血管内皮細胞にオクルージンを過剰発現することを明らかとした多価不飽和脂肪酸投与モデルを用いて検証を進め、Glucagon-Like Peptide (GLP)-1 の摂食抑制の消失が判明、末梢臓器(小腸)において産生される摂食抑制シグナルであるGLP-1 が、液性食欲調節因子として血液脳関門を介して伝えられる可能性が明らかとなるとともに、栄養因子によりこのようなシグナルの血液脳関門を介した伝達低下が摂食量増大、肥満形成への関与が示唆された。更にアミロイド蛋白の中枢への移行にも血液脳関門機能の修飾が重要であることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)神経性情報伝達機構異常による食欲調節機構破綻の解明 1. ネスファチン/ヌクレオビンディン-2 (NUCB2)欠損マウスの解析を進めた結果、全身組織における同蛋白の欠損では、中枢における摂食抑制蛋白の欠損により生じるであろうと考えられた肥満状態は惹起されず、むしろ電子顕微鏡を用いた検討を行えたことより、骨格筋組織や褐色脂肪組織におけるミトコンドリアの増生が生じることが判明した。これに伴う脂肪酸代謝の亢進が、液性情報として中枢へ伝達されることにより食欲抑制蛋白の発現亢進とともに、食欲促進蛋白の発現減少が生じるとともに、酸素消費量の増大が観察され、これらの結果として長期的な体重が減少する現象が観察された。またミトコンドリアの増生の成因究明のために DNA microarray 解析などの分子生物学的な解析をいくつかの臓器において施行するも現時点においては、その詳細な機序の解明にまでは到達できていない。 2. 当初、胃におけるネスファチン/NUCB2の発現と神経系の関連を想定したが、VMH 破壊ラットにおける胃の同蛋白の発現は有意な変動が観察されず、このような仮説が成立しないことが判明した。 2)液性情報伝達機構異常による食欲調節機構破綻の解明 1. 当初に計画した脳血管内皮細胞に特異的にオクルージンを過剰発現するマウスの作成が出来ず、この点に関する検討を進められなかった。 2. これまでの研究期間において、外国医療施設との共同研究を行う機会が得られ、胃より中枢へのネスファチン-1シグナルの重要性について臨床検体を用いて解明する追加研究を行うことが出来た。その結果、肥満者において胃縮小術を施行することにより血中ネスファチン-1濃度が明らかに低下することが明らかとなった。このような結果より、胃由来のネスファチン-1 がその血中濃度を規定する規定する重要な因子となることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでネスファチン/ヌクレオビンディン-2 (NUCB2)欠損マウスにおいて得られた同蛋白の肥満症への促進的な作用において、今後は逆の観点より、ネスファチン/NUCB2過剰発現マウスを用いた解析を進めてゆく。前年度研究費にて委託先にて作成したネスファチン/NUCB2過剰発現雄性マウスを繁殖させ、このマウスを通常食及び高脂肪含有食下に長期間飼育し、摂餌量や体重増加量の変動について野生型マウスと比較検討することにより、同遺伝子欠損による体重、摂食行動や代謝への影響(抗肥満効果)に関して確認を行ってゆきたい。またその際に得られる生体試料より、電子顕微鏡などを用いて明らかにされるであろう形態学的変化や real-time PCR などの手法を用いて明らかとされる生化学的変化について検索を進め、同蛋白欠損マウスにおいて得られた結果と比較することにより、同蛋白が肥満症成立に関して有する生理的な意義や詳細な作用機序について明らかとしてゆきたい。
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Research Products
(9 results)