2012 Fiscal Year Annual Research Report
macroscopic structure made by the interactions that differ in the effective distance
Project Area | From molecules, cells to organs : trans-hierarchical logic for higher-order pattern and structures |
Project/Area Number |
22127003
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
近藤 滋 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (10252503)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 皮膚模様 / パターン形成 / 反応拡散系 / 形態形成 / ゼブラフィッシュ |
Outline of Annual Research Achievements |
進展のひとつは、メラノフォア、ザンソフォア間の長距離シグナルの実体に関しておおよその理解ができた事である。皮膚におけるメラノフォアは、ザンソフォアの領域に長い突起を出しており、それがザンソフォアと接触している様子が電子顕微鏡で確認できた。さらにこの突起でのシグナルが、おそらくdelta-notchで行われていることに関する証拠も間接的ではあるがいくつか得られている。まず、delta-notch刺激の阻害剤でメラノが死ぬ事、delta-notchの過剰発現によって起きる模様変異が、仮説と一致するものである事、delta-notchの過剰発現が、ザンソフォアのレーザー消去によるメラノフォア細胞死を阻止できることなどである。今後、さらにもっと直接的な分子的証拠(シグナル伝達そのものの可視化)を目指したい。 二つ目の進展は、in vitroの実験系がかなり良く確立されてきた事で、細胞動態の定量化にある程度めどが立った事である。定量化により、細胞の動態をモデル化してシミュレーションを行なえる可能性が高くなった。これまで行ってきたような概念的なモデルではなく、測定値に基づいたシミュレーションを行う事で、より詳細な模様形成の原理に迫ることができると期待する。 3つ目の進展は、seurat,Daliという2種類の模様変異遺伝子特定、およびその細胞における役割が明らかになった事である。それぞれの遺伝子は膜たんぱくであり、細胞接着、細胞移動に働いている。これ等の因子は、色素細胞間の相互作用を担うものではないが、これまで行ってきたvivoの実験で、細胞の接着、移動が色素細胞パターンの形成の主役であると示唆されており、それを追認するデータとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、ゼブラフィッシュの皮膚模様パターン形成の原理を明らかにし、その分子細胞レベルの情報を使って、動物のパターン形成の原理を明らかにしようとするものである。この2年間の最大の成果は、色素細胞間の相互作用がインビトロで見えるようになってきた事と、長距離の相互作用を伝達すると思われる細胞突起の発見である。 これまで、動物における等間隔パターン形成の原理は、Turingの反応拡散であると考えられており、実験研究者は拡散分子の同定を目指して研究を続けている。しかし、体内における分子の拡散が安定した勾配を作ることは、常識的に考えて非常に難しく、その現実性が問われていた。我々が発見した細胞突起による長距離シグナルを使ったパターン形成原理は、理論的にはTuringの原理と相同であるが、拡散ではなく、より安定な細胞突起の長さがキーとなるため、遥かに安定であることが予測できる理想的なものである。研究当初目指していたのは、まさにこのような発見であり、非常に重要であると自負している。もちろん、現時点ではまだ分子的な証拠が不足しており、「仮説」という段階を出てはいないが、今後、「黒細胞の細胞突起伸長のダイナミクス」「突起の先で起きるシグナル伝達反応の同定」を明らかにしていくことによって証明できると期待している。この2つの研究項目は、仮説の証明には必須ではあるが、in vivoの現象であるため、その同定には新たな技術を開発する事が必要であり、短期間で完成されるようなものではないかもしれないが、既に道筋は明らかであると考えているので、着実にゴールを目指したい。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 黒色色素細胞の突起の動態の観察>>黒色色素細胞の突起が、長距離の細胞間相互作用を介在するデバイスになっていると言うのが現在の仮説であり、それを証明するための証拠の一つとして、突起は何時、どのような仕組みで黄色細胞に向かって伸びて行き、接触するのかをアダルトの皮膚において動的に観察することが重要である。一個の細胞の突起を可視化し、動きを追尾するために、レーザーで蛍光の変化を起こすkikumeを蛍光指示タンパクとして使い、突起のvivoにおける可視化を行い、時間変化を記録する。うまくいけば、黄色細胞に対する突起接触の有無と黒細胞の生存の関係が明らかになると期待している。
2. 黒色細胞の突起の先端でのシグナル伝達の可視化>>現状では、突起の先でシグナル伝達がある、その分子はデルタノッチとギャップジャンクションであると推定しているのみであり、シグナル伝達が実際に起きている事を分子レベルで確認できているわけではない。このデータは、仮説の証明には必須であるが、実験的な困難が大きく、方法を模索しながらという形になるため、かなり時間がかかると予想するが、研究期間の終わるまでには何とかなるのではないかと期待している。
3. 黄色細胞の短い突起で起きる分子相互作用の詳しい解析>>黄色細胞の先端が黒細胞に接触すると黒細胞が逃げ、黄色はそれを追うと言う一連の挙動が誘導され、それが2種の細胞の分離の主要因であると考えている。この動きのためには突起の先での双方向のシグナル伝達が必要であり、現時点ではシグナル分子が同定されていない。これも、研究機関の終わるまでには何とかしたい。
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Research Products
(14 results)