2012 Fiscal Year Annual Research Report
A ligical link between force-sensitivec process in a micro sclae and cardiogenesis in a macro level.
Project Area | From molecules, cells to organs : trans-hierarchical logic for higher-order pattern and structures |
Project/Area Number |
22127006
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小椋 利彦 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (60273851)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 力 / 転写 / miRNA / 心臓 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)力学刺激が発現制御する遺伝子 培養細胞にせん断応力を印加することによって発現誘導が起こる遺伝子(miRNA を含む)として miR-143、miR-21、 egr1 の3つを同定しているが、本年度は、miR-21 と egr1 を中心に研究を進めた。この2つはゼブラフィッシュ心臓をモデルにした発現部位検索で、両者とも房室弁とOFT弁(大動脈弁)に特異的に発現することを明らかにした。血流依存性を調べる目的で、BDMで一時的に心拍を止めると発現は速やかに消失し、BDM を洗い流して心拍を再開させると15分程度で発現が完全に回復するが明らかとなった。 2)力学刺激に反応する遺伝子の機能解析 miR-21 に対する morpholino oligo を合成し、機能阻害実験を行った。その結果、sprouty2、pdcd4a/b、ptenb の発現異常を伴って弁形成が完全に抑制されることがわかった(Nature Communications 2013 in press)。また、miR-21 の速やかな発現誘導には、逆流を伴う複雑な血流が重要で、層流では誘導が緩やかであった。これは培養細胞を用いた in vitro 実験でも確認された。すなわち、static な血流より、chaotic な流れが発現誘導の主因である。この知見を Nature Communications に投稿し、in press となった。一方、egr1 の機能阻害でも弁形成が完全に抑制されることを確認した。 3)力学刺激の可視化 せん断応力の印加で最も早く誘導される egr1 遺伝子の発現調節領域を解析し、力学刺激応答制御部位を同定し、SRF 結合部位が複数並ぶ特殊な配列を持つことがわかった。この部位を用いることで、伸展やせん断応力によって EGFP の発現上昇を起こす可視化ベクターを作製した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2013年になって、血流によって発現誘導、維持される miR-21 がゼブラフィッシュ心臓の弁形成に必須であることを証明した論文が Nature Communications にアクセプトされ、一定の成果を上げることができた。miR-21 に関しては、ノックアウトマウスの作製も終了し、2012年後半から解析を開始している。予備的な実験から、このマウスは、外傷後の wound healing の過程に異常が見つかっている。また、miR-21 がゼブラフィッシュのヒレと心筋再生時に高発現誘導されることも見いだしており、miR-21 を構成的に発現するトランスジェニックフィッシュの作製も終了している。この TG ラインにおいて、ヒレと心筋に過剰再生がおこるかなど、新しい研究の視点も生まれてきている。 また、力刺激で細胞質から核内に移行して遺伝子発現を調節する因子 MKL2 の解析も、遅れているが進行している。この過程で新たに同定した MKL2 転写活性化クロマチン因子の機能解析も開始した。この中で、この因子をコードする遺伝子のノックアウトマウスの作製を開始した。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究は、ほぼ順調に進められており、また、新しい視点からの研究も開始されている。ただ、新しいノックアウトマウスの作製は、EUCOMM からの ES 細胞から開始したため、マウス完成までの道筋が現時点で不確かになっており、EUCOMM の実験進行にゆだねられている面がある。MKL2 のノックアウトマウス、Filamin のノックアウトマウスの作製に、半年ほどの時間を費やしたが、この程度の時間はかかると予想している。 これまでの研究から、力学刺激(主に心筋に加わる伸展刺激)が 心筋の脂質代謝と ATP 産生を調節することが明らかとなった。このことは、高血圧や頻脈等によって心筋のエネルギー要求量が更新した時、それに適応的に ATP 産生を上げるメカニズムであると考えられる。心筋のエネルギー代謝は、胎児期に glycolytic 、成体で lipolytic になっており、成体でも心不全時には glycolytic に戻ることが知られている。従って、われわれの新しい知見は、このメタボリックシフトに関与しているし、心不全を代謝面で制御する方策の発見にも結びつく可能性がある。miR-21 の心筋再生への関与と共に、今後の研究に新しい視点である、重要な研究テーマとして推進してゆく必要がある。
|
Research Products
(9 results)