Research Abstract |
胚を様々な断面で切断した際の断面の凹凸を調べることで,発生途中の胚内部の応力分布を明らかにすることを目指し,5年間に亙る研究を進めている.内部に局所的に引張とその反作用としての圧縮が作用した物体があった場合,これを力の作用方向と垂直な断面で切断すると,引張力の作用していた部分は陥没し,圧縮力の作用していた部分では突出することが予想される.従って断面の凹凸を細かく調べることで胚内部の応力分布が推定できる.これが測定原理である.試料には操作性を考慮し,アフリカツメガエル胚を重点的に用いることにした.研究初年度の本年度はまず,基礎データ蓄積と実験方法の確立を進めた.具体的には,まず,ホルマリン固定胚を用いた基礎データ蓄積を行った.すなわち,ホルマリン固定した胚をマイクロスライサで切断し,断面の凹凸をディジタルマイクロスコープで計測した.従来は正中線で切断していたが,今回は胚内の細胞群の運動方向に直交する断面で切断し計測した.その結果,従来同様,中・内胚葉に圧縮力,外胚葉に引張力が作用している結果は同じであったが,原腸陥入時に変形しながら胚内部に巻き込まれる部分であるIMZ(involuting marginal zone)のある側に応力が集中している可能性を示唆する結果が得られた.また,正中断面でアクチンの分布を観察したところ,アクチンは外胚葉側に比較的多く分布し,また,原腸陥入が生じる領域にアクチンの集中が見られた.アクチンフィラメントが収縮力を発生すると考えることで力の分布が説明できる結果が得られた.なお,当初は環境制御型SEM下での凍結切断法の確立を進める予定であったが,装置の導入が3月にずれ込んだため,装置の動作確認をする段階に留まった.この他,小椋班員らによるゼブラフィッシュ胚心臓の力学特性計測,上野班員らのアフリカツメガエル先行中胚葉の発生力計測などの実験に協力した.
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