2012 Fiscal Year Annual Research Report
アーバスキュラー菌根共生系から根粒共生系への進化基盤の解明
Project Area | Genetic bases for the evolution of complex adaptive traits |
Project/Area Number |
22128006
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
川口 正代司 基礎生物学研究所, 共生システム研究部門, 教授 (30260508)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 勝晴 信州大学, 農学部, 准教授 (40444244)
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Project Period (FY) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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Keywords | アーバスキュラー菌根菌 / 根粒形成 / 共生 / 進化 / 茎頂メリステム / 数理解析 / 進化ダイナミクス |
Research Abstract |
AM 菌Rhizophagus irregularis DAOM197198 のゲノム配列を国際コンソーシアムとの連携で解読し、約90Mbのドラフト配列を得た。これまでの予想に反して同一生体内の遺伝子多型が少なく、またゲノムサイズも大きく見積もられた。AM菌のゲノム解読と並行して、信州大山田明義准教授らの協力を得てAM菌より古い起源の菌類であるEndogone pisiformisとSclerocystis pubescensについて、ゲノムサイズを調べた。AM菌のRNA-seq解析からは、外生菌糸と内生菌糸では糖・脂質・アミノ酸代謝関連遺伝子の発現が異なることが示された。また、非菌根植物であるルピナスとミヤコグサの菌根共生変異体のRNA-seqデータを取得した。 植物体内のカルシウムイオン濃度を測定するカルシウムイメージング技術を確立し、多くの共生変異体における共生応答反応を明らかにした。 ミヤコグサのtricot変異体の原因遺伝子を特定し、根粒と茎頂メリステムの制御に共通した新規機構が存在することが示唆された。また、細胞レベルでの詳細なオーキシン応答パターンと根粒形成の正および負の制御因子との相互作用を調べ、根粒の初期発生におけるオーキシンの作用点を明らかにした。複数のミヤコグサWOX遺伝子の機能解析を行い根粒形成における影響を調べた。 マメ科植物と根粒菌の共生の進化機構を理解するために、adaptive dynamicsに基づく数理モデルを構築し、理論解析および数値解析を行った。その結果、(i)全く共生関係が進化しない、(ii)強固な共生関係が進化、(iii)中間的な強さの共生関係が進化、(iv)窒素固定菌と無効根粒菌とが共存、の大きく4種類の場合が出現することがわかり、さらに個体あたりの根粒数の制限は、ぼったくり菌の感染から身を守る上で重要であることを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
AM菌の一種であるRhizophagus irregularis DAOM197198のゲノムを国際コンソーシアムとの連携で解読し、AM菌の分子生物学的研究の基盤構築に貢献できた。樹枝状体形成に関わる遺伝子を単離するため、レーザーマイクロダイセクション法を検討したが、高品質のRNAを得ることができなかった。一方で、樹枝状体形成に異常が見られるME2329共生変異体を用いて、変異体に特徴的な遺伝子発現パターンを明らかにし、樹枝状体形成に関わる分子メカニズム研究に貢献できた。 ミヤコグサにおいてカルシウムイオン濃度を測定するカルシウムイメージング技術を確立し、多くの共生変異体において共生応答反応「Caスパイキング」の解析に貢献できた。 ミヤコグサtricot変異体の原因遺伝子を特定し、根粒と茎頂メリステム形成の制御に共通した新規機構が存在することを見いだした。また根粒の初期発生におけるオーキシンの作用点を明らかにすることができた。 根粒菌の窒素固定能に関する進化ダイナミクスの数理モデルを構築・解析することにより、Cost-Benefitバランスによりマメ科植物と根粒菌の進化状態が大きく4種類に分類でき、それらの条件を理解することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
AM菌より分岐年代の古いSphaerocreas pubescenesとEndogone pisiformisのドラフトゲノム配列を決定した。さらにPacBioシーケンサーを用いてゲノム配列解析を完了した後、比較ゲノム解析から共生菌のゲノム進化を明らかにする。 トランスクリプトーム解析から抽出した転写因子に着目し、RNAi法で機能解析を行うとともに、ChIP-seq解析で遺伝子発現ネットワークの解明を行う。 共生変異体の解析から、既知の共生シグナル受容体NFR1に依存しない新奇の共生シグナル受容体とシグナル伝達経路の存在が示唆された。この解析からAM共生から根粒共生へのシグナル伝達経路の進化的背景が明らかとなることが期待される。 根粒形成と茎頂メリステム形成に共通する制御因子をさらに特定・比較解析することにより、根粒共生系の進化基盤の解明を試みる。 マメ科植物-根粒菌の共生関係の維持に影響を与える様々な効果、例えばhost sanction, partner choice, mixed noduleなどが今まで頻繁に議論されている。そこでそれらの効果のモデルにおける影響を検証することにより、この共生関係の進化についての理解を深める。
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[Journal Article] The SNARE Protein SYP71 Expressed in Vascular Tissues is Involved in Symbiotic Nitrogen Fixation in Lotus japonicus Nodules.2012
Author(s)
Hakoyama T, Oi R, Hazuma K, Suga E, Adachi Y, Kobayashi M, Akai R, Sato S, Fukai E, Tabata S, Shibata S, Wu GJ, Hase Y, Tanaka A, Kawaguchi M, Kouchi H, Umehara Y, Suganuma N.
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Journal Title
Plant Physiol.
Volume: 160
Pages: 897-905
DOI
Peer Reviewed
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