2010 Fiscal Year Annual Research Report
共生細菌による宿主昆虫の体色変化:隠蔽色に関わる共生の分子基盤の解明
Project Area | Genetic bases for the evolution of complex adaptive traits |
Project/Area Number |
22128007
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
深津 武馬 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 研究グループ長 (00357881)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土田 努 富山大学, 先端ライフサイエンス研究拠点, 助教 (60513398)
二河 成男 放送大学, 教養学部, 准教授 (70364916)
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Keywords | 共生 / 体色変化 / 隠蔽色 / 擬態 / ゲノム |
Research Abstract |
ヨーロッパの野外集団由来のアブラムシ系統を収集したところ、緑色の母虫が赤色の幼虫を産む系統がいくつか得られた。これらの系統の幼虫は成長するにつれて体色が赤から緑に変化し、4令幼虫から成虫に至ると完全に緑色になった。これらのアブラムシ系統の共生細菌叢を調べたところ、必須共生細菌Buchnera以外に2種類の共生細菌が感染していることがわかった。1つは既知の共生細菌HamiltonellaもしくはSerratiaで、いずれかが感染していた。さらに、未知のRickettsiella属の共生細菌が共感染していた。ヨーロッパのアブラムシ集団由来の353個体について調べたところ、28個体(7.9%)がRickettsiellaに感染していた。Rickettsiellaに感染したアブラムシから体液を採取して、感染していない系統に微小注入し、遺伝的背景が同一でありながらRickettsiella感染/非感染のみが異なるアブラムシ系統を多数作成した。すると、Rickettsiellaに感染させた赤色系統のアブラムシは、すべて体色が緑色になった。一方、もともと緑色だった系統にRickettsiellaを感染させても特段の変化は見られなかった。3系統のアブラムシについてRickettsiella感染個体と非感染個体を作成して、体重、成長速度、産子数、寿命を比較したが、ほとんど有意な違いは見られなかった。すなわち、この共生細菌は特に宿主アブラムシに悪影響を与えずに赤色の体色を緑色に変えることが判明した。 アブラムシの体色は主に、黄色から赤色のカロテノイド系色素と、緑色から青色などさまざまな色の多環性キノン系色素から構成される。リケッチエラに感染した緑色のアブラムシと非感染の赤色のアブラムシの色素分析を行ったところ、カロテノイド系色素の組成や量には大きな違いは見られなかった。一方、緑色系の色素については、感染状態による色素組成の変化はなかったが、その量が感染アブラムシでは非感染アブラムシの3倍以上に増加していた。 Rickettsiella感染により、宿主アブラムシの緑色色素の生産が何らかの形で活性化されて体色変化が起こると推察された。
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Research Products
(5 results)