2011 Fiscal Year Annual Research Report
人工癌幹細胞ニッチの構築による癌幹細胞維持シグナルの解明と新規治療戦略の開発
Project Area | Development of Novel Treatment Strategies Targeting Cancer Stem Cells |
Project/Area Number |
22130008
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
田賀 哲也 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (40192629)
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Keywords | 癌幹細胞 / 癌幹細胞ニッチ / ポリマー / Side Population / グリオーマ / 自己複製 / 移植 / 多様性 |
Research Abstract |
癌組織を構成する細胞に多様性があり、その中でも治療抵抗性を有し癌組織構成細胞への分化能と自己複製能を維持する癌幹細胞は、癌根治に向けて治療標的として重要な細胞であるが、その性状については未知の点が多い。本課題では、癌幹細胞の維持に寄与する癌幹細胞周辺微小環境(ニッチ)の分子基盤解明を介してその解決を図った。(1)昨年度用いた約400種類の化学合成ポリマーをドットしたマイクロアレイと、新規のマイクロアレイによるスクリーニングの結果得たヒットポリマー(4種類のポリアクリレート系と1種類のポリウレタン系)を、マイクロドット規模から培養ディッシュ規模に拡大して、C6グリオーマ中の癌幹細胞集団(side population,SP)の維持能を指標に癌幹細胞ニッチ構造ミミクリー性の検証を行った。その結果、ポリウレタン系のポリマー1種類について、培養基材として用いることで、SP細胞集団の性質(自己複製能および造腫瘍能)が効率よく維持されることを見いだした。(2)昨年度までに、癌幹細胞集団に由来する非癌幹細胞が作り出すニッチが癌幹細胞ひいては癌組織の生存戦略に利用されていることを示した。C6のSP細胞と非SP細胞のマイクロアレイ解析で得た遺伝子発現プロファイルの情報をもとに行った実験から、非SP細胞に発現の高いコラーゲンとラミニンが、少なくともin vitroの培養基質とした場合にSP細胞集団の維持に寄与することを示すことができた。(3)C6グリオーマSP細胞をNOD/SCIDマウスに移植すると高い造腫瘍性を示すが、前項の関連研究により移植脳の腫瘍血管の周辺にコラーゲンとラミニンの存在量が高いことを見出した。(4)その腫瘍血管が、ホストマウス由来だけでなくSP細胞由来の細胞からも構成されることをSP細胞導入遺伝子と血管内皮マーカーの解析から明らかにし、それが薬剤抵抗性であることも示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的とした化学合成ポリマーを用いたニッチ構造ミミクリーの新規スクリーニングを予定通り実施し、候補ポリマーの検証もマイクロドット規模から3.5cm径の培養ディッシュ規模に拡大して行い、構造の考察もすることができた。癌幹細胞由来ニッチ環境についても、遺伝子発現プロファイリングを実施してコラーゲンとラミニンに着目することで薬剤抵抗性血管内皮への分化による造腫瘍性への寄与を示唆することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られた基礎的研究成果に基づいて、今後、癌幹細胞ニッチを治療標的とした開発的研究へと展開させることが本研究課題に必要とされる事項の一つである。そのためC6グリオーマで同定した化学合成ポリマーについて、人工癌幹細胞ニッチとしての特異性を向上させるアプローチと、他の癌幹細胞系への汎用性の検証、人工ニッチで捕集した癌幹細胞分画の性状やシグナル解析等を推進する。癌幹細胞に由来するニッチ環境については腫瘍内に形成される血管内皮細胞が癌幹細胞由来で且つ薬剤抵抗性を示すものがあることを示したが、それに関わる分子群を標的とした阻害実験等による腫瘍形成抑制の検討へと展開させることが必要であり、次年度はこの観点での研究も進める。
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Research Products
(20 results)