2011 Fiscal Year Annual Research Report
システム生物学的手法を用いた癌幹細胞の新規分子標的の同定
Project Area | Development of Novel Treatment Strategies Targeting Cancer Stem Cells |
Project/Area Number |
22130009
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
後藤 典子 東京大学, 医科学研究所, 特任准教授 (10251448)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日野原 邦彦 東京大学, 医科学研究所, 特任助教 (50549467)
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Keywords | 癌 / 遺伝子 / 蛋白質 / 細胞・組織 / トランスレーショナル研究 |
Research Abstract |
1)乳癌幹細胞システムを制御する鍵分子並びにパスウエイの同定 乳癌幹細胞スフェア培養の系に、PI3 kinaseの特異的阻害剤LY294002を添加して、PI3 kinaseパスウエイを阻害し、この条件下で乳癌スフェアを形成させ、詳細な時系列をとってRNAを抽出し、DNAマイクロアレイ解析を行い、網羅的にmRNA発現情報を取得した。PI3 kinaseパスウエイ阻害により、約900個の鍵分子候補が得られた。これらの分子群をシグネチャーとして使って、乳癌の組織型、転移、再発ひいては予後との相関を解析している。さらに、in vitro乳癌幹細胞培養の系を用いて、スフェア形成能に与える影響をみたところ、自己複製能に重要な役割を果たしていることが示唆される分子が多く抽出されてきた。これらの分子の多くは新規分子標的候補である。その中で、AREG, ARTN, IGF-1に注目して解析を行った。その結果、どの分子も癌細胞のスフェア形成能を上昇させることがわかった。 2) 乳癌幹細胞システムを制御する鍵分子の個体レベルにおける解析 HER2乳癌自然発症モデルであるMMTV-neuマウスとFRS2betaノックアウトマウスを交配させたマウスを用いて解析を行った。その結果、FRS2betaによってErbBシグナルを効果的に減弱させることにより、癌幹細胞の自己複製能が維持される機序が考えられた。FRS2betaノックアウトマウス由来の乳腺細胞は、野生型マウス由来の乳腺細胞に比較し、スフェア形成能が低いことが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1)乳癌幹細胞システムを制御する鍵分子並びにパスウエイの同定 PI3 kinaseパスウエイから得られた鍵分子が、乳癌の組織型、転移、再発ひいては予後と相関が得られた。これは、我々が注目しているPI3 kinaseパスウエイの鍵分子の中に、癌幹細胞を根絶できる分子標的が多数含まれていることを端的に示している。当初の予想以上に、多くの分子標的が含まれていることから、解析自体には時間がかかっている。 2) 乳癌幹細胞システムを制御する鍵分子の個体レベルにおける解析 FRS2betaが、癌幹細胞そのものに発現しているという知見を得た。長年、我々はFRS2betaに着目して研究をやってきており、この分子の研究については世界的に我々が最も進んでいる。それが、癌幹細胞そのものの機能を制御していることがわかったことは、画期的である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで通りの予定で、乳ガン細胞の詳細時系列解析から得た鍵分子の機能解析を行う。しかし鍵分子候補の数が、予想をこえる数(521遺伝子)であるため、候補分子を絞り込み、機能解析するのに時間を要することを想定している。この鍵分子の中には、がんの革新的な創薬標的候補が多くあるため、この機能解析は研究の中心的な部分となる。 特に研究の変更や問題点は見いだしていない。
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Research Products
(19 results)
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[Journal Article] FRS22011
Author(s)
後藤 典子
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Journal Title
Encyclopedia of Signaling Molecules. Springer, Heidelberg, Germany
Volume: 巻なし
Pages: -
Peer Reviewed
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