2013 Fiscal Year Annual Research Report
コアヒストンから迫る新規クロマチン構造変換機構の同定
Project Area | Coupling of replication, repair and transcription, and their common mechanism of chromatin remodeling |
Project/Area Number |
22131002
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Research Institution | Tohoku Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
関 政幸 東北薬科大学, 薬学部, 教授 (70202140)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ヒストン / ヒストンバリアント / ヌクレオソーム / H2A.Z / FALC法 / TBS-III領域 / acidic patch 領域 / 点変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
全てのDNA介在反応に連動し、ヌクレオソーム (ヒストン八量体に DNAが巻き付いた) 構造はダイナミックに変換する。本研究では、439株からなる酵母ヒストン点突然変異ライブラリーを用い、 様々な核内反応時のヒス トンの役割の解明を目指す。 本領域の発足直後から上記ライブラリーを駆使し、DNA修復 (Genes Cells 15, 945-958, 2010)、染色体分配 (EMBO J.30, 3353-3367, 2011)、転写伸長 (Genes Cells 17, 65-81, 2012) におけるヒストン残基の新規役割の特定について報告してきた。平成25年度は、連結ヒストン法の論文化およヌクレオソーム上のTBS-III領域 (EMBO J.30, 3353-3367, 2011) と acidic patch領域について研究を集中させた。 連結ヒストン法とは平成24年度までに完成させたコアヒストンを解析する新手法 “Functional analysis of linker-mediated complex (FALC) strategy” のことである。具体的にFALC法をコアヒストンに適用した結果、ヒストン H2Aと H2Bの機能を保持した状態で一分子(連結H2A-H2B)として連結することに成功し、さらに機能的な連結 Htz1(H2Aのバリアント)-H2Bも作製できた。本年度において、連結H2A-H2Bと連結 Htz1-H2BのそれぞれのH2B部分に点変異を導入することで、それぞれの連結ヒストンにおけるH2Bの機能を初めて調べることに成功した。その成果は、Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 111, 699-704, 2014に掲載され、その内容は科学新聞 第3471号 2014年1月24日(金)でも紹介された。TBS-III領域と acidic patch領域に関する実績については、現在までの達成度および今後の研究の推進方法の項目で述べることにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請時に、 1) TBS-III領域 と 2) acidic patch領域について研究を集中させ、さらに 3) FALC法を用いた連結ヒストンの解析(出芽酵母)と 4) FALC法の脊椎動物細胞への応用も手がける研究方針を掲げていた。1), 3), 4)の研究は順調に進んだが、2) の研究が予想通りには進まなかった。以上を総合して判断し「おおむね順調に進展した」と区分した。次に1)-4)のそれぞれの達成度を簡潔に記す。
1) TBS-III領域の解析:順調に進展した。染色体分配において、TBS-III領域のヒストン点変異はセントロメアタンパク質群のセントロメアへの結合を低下させ、さらにはセントロメアタンパク質の転写量を低下させ、それと同時にセントロメアを通過する non-coding RNAの転写を亢進させた。つまり、TBS-III領域は上記の複合的な作用を統括することで染色体分配を円滑に進めていることを明らかにした。 2) Acidic patch領域の解析:本領域に点変異を有するヒストン変異株の抑制変異株を同定し、その全ゲノム解析を行うことで、本領域と関連の深い因子群を次世代シークエンサーを用いて一網打尽にする方針を立て、それに向かい「繰越申請」も行って研究を遂行していた。様々な条件でスクリーニングを行ったが、残念ながら目的の抑制変異株を取得することができなかった。結果から逆算して考えられる最大の理由は、acidic patchの変異による表現型はあまりにも多数の因子との相互作用の部分的欠損による総和として現れるため、抑制変異の取得は原理的に困難だったことであろう。研究 2) のさらなる遂行を断念せざるを得ない。 3) FALC法(酵母):極めて順調(実績の項目を参照)に進展した。 4) FALC法の脊椎動物への展開:順調に進展した。ニワトリDT40細胞において、連結 H2A.Z-H2Bヒストンが機能できることを実証した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に関わった課題1)-4)(上記の実績および達成度の項目を参照)のうち、3)の課題は本年度中に論文化できたので終了する。また、2)の課題は断念(達成度の項目参照)する一方、最終年度に向け 1) および 4)の研究をさらに進展させる方針をとる。さらに、交付申請時には記載していなかった相同組換え修復に欠損を示すコアヒストン変異株候補の同定に成功したので、最終年度にはその詳細な分子生物学的解析を行う方針をとる。
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Research Products
(11 results)