2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヒストン修飾酵素の欠損による転写疾患とゲノム機能調節
Project Area | Coupling of replication, repair and transcription, and their common mechanism of chromatin remodeling |
Project/Area Number |
22131003
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
青田 聖恵 (浦 聖恵) 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (80289363)
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Keywords | クロマチン / ヒストン / ヒストンメチル化 / ES細胞 / MEF細胞 / Whsc1 / Tip60 |
Research Abstract |
ヒストンH3の36番目のリジン残基のジ・トリメチル化(H3K36me2/3)は、酵母からヒトまで種を越えてゲノムの転写活性化状態と明確な正の相関関係を示し、進行中の転写領域をマークして分布する。が、その分子機能は未だに不明である。Setドメインを含むNSDファミリータンパク質の一つ、Wolf-Hirschhorn syndrome candidate 1(Whsc1,別名MMSET,NSD2)の欠損マウスは4p-症候群(Wolf Hirschhorn syndrome,WHS)と同様に、正中線に沿った様々な形態異常を引き起こし、出生直後に死亡する。これまでの特異的なヒストンH3抗体を用いた、in vitroヒストンメチル化酵素活性解析に加えて、本年度、H3K36meヒストンを用いた再構成ヌクレオソームを基質に用いて、Whsc1がH3K36me特異的なヒストンメチル化酵素である事を明らかにした。また、Whsc1の転写制御機能を解き明かすために、Whsc1欠損ES細胞の分化異常を胚様体形成過程で検討した。その結果、Whsc1欠損ES細胞では、胚様体の大きさが、遺伝子欠損マウスと同様に小さくなる事が判明した。マイクロアレーを用いた遺伝子発現解析の結果、Whsc1遺伝子を欠損すると、Oct3/4やNanogなど未分化ES細胞で高発現している遺伝子群の細胞分化による抑制が、ことごとく抑えられる事が判明した。また一方で、Whsc1の複合体解析の結果、Whsc1は特定の転写因子以外に、DNA損傷修復に関わるH2AXやヒストンアセチル化酵素Tip60に結合している事が確認された。以上の結果から、今後、転写制御・細胞増殖とゲノムの機能維持の接点がWhsc1の機能解析から解明される事が期待される。
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