2011 Fiscal Year Annual Research Report
発がんとがん治療に影響を与えるクロマチンリモデリングの制御機構
Project Area | Coupling of replication, repair and transcription, and their common mechanism of chromatin remodeling |
Project/Area Number |
22131006
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
河野 隆志 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (80280783)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荻原 秀明 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (40568953)
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Keywords | 発がん / がん治療 / クロマチンリモデリング / ヒストン修飾 / DNA切断修復 / 非相同末端結合 / CBP/p300蛋白質 / SWI/SNF複合体 |
Research Abstract |
がん放射線治療ではDNA二本鎖切断(DSB)の誘導ががん細胞死誘導の主要因となる。放射線により生じたDSBは非相同末端結合(NHEJ)によって主に修復されるため、当該修復の阻害はがん放射線治療の増感手段となりうる。昨年度、我々は、ヒトがん細胞の染色体上に生じたDSBに対するNHEJのアッセイ系を構築し、NHEJにヒストンアセチル化酵素(HAT:histone acetyltransferase)であるCBP及びp300タンパク質、及び、SWI/SNFクロマチンリモデリング複合体がNHEJを促していることを明らかにした。本年度は、上記アッセイ系が生細胞で放射線によるDSBでみられるincompatible DNA断端に対するNHEJを再現していることを確認し、さらに同アッセイ系を用いて、CBP、p300を含むHAT阻害効果を持つ天然化合物について、がん放射線治療の増感剤としての有用性等がん治療への応用性について追及した。Garcinol(マンゴスチン成分)、Curcumin(ウコン成分)、Anacardic Acid(カシューナッツ成分)について検討したところ、Garcinolが最も高い増感作用を示した。GarcinolはNHEJ活性を抑制したが、放射線に対するG2/M DNA damage checkpointには影響を与えなかった。また、Garcinolは放射線処理後のMNase感受性を抑制した。Garcinol処理した細胞では、放射線照射後にG1期に停止し、細胞老化が亢進していた。以上のことから、Garcinolは、DSB後の染色体弛緩を抑制することでNHEJを阻害し、がん細胞死を誘導することが示唆された。Garcinolは、民間薬として用いられ、臨床試験で重篤な副作用は見られないことから、放射線増感剤として有望である。一方、Curcuminは、相同組換え修復(HRR)活性を抑制する作用をもつことを明らかにした。しかし、CBP/p300の機能ををsiRNA処理により抑制しても、HRR活性の阻害は顕著ではなかった。よって、CurcuminはCBP/p300以外の分子を阻害することで、HRRを抑制する可能性が考えられた。また、日本人肺がんの10%程度においてSWI/SNF複合体の触媒サブユニットBRG1タンパク質の発現低下が生じていることを明らかにした。今後、治療応答性とのかかわりを調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した通り、ヒト生細胞における染色体DNAの非相同末端結合修復アッセイ系の構築が終了し、DNA切断修復にかかわる新規クロマチンリモデリング分子の同定、ヒトがん細胞におけるクロマチンリモデリング・DNA切断修復遺伝子異常の探索が進行中である。また、本年度はクロマチンリモデリング・DNA切断修復異常を利用した分子標的治療法の開発を開始しつつある段階にある。よって、おおむね順調であると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、クロマチンリモデリング分子を標的としたがん治療法の開発研究をさらに発展させる。具体的には、SWI/SNF複合体の触媒サブユニットBRM及びBRG1やDNA切断修復応答因子の発現低下の把握、既存がん治療法への応答性との関与、発現低下細胞に有効ながん治療法の開発である。これは、当初の目的であり、また、本研究の支援より、クロマチンリモデリング分子ががん細胞の悪性形質の維持や治療抵抗性に関わることが明らかにできたことに基づく判断である。
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Research Products
(11 results)