2012 Fiscal Year Annual Research Report
複製と修復をカップリングする損傷乗り越え複製の普遍性
Project Area | Coupling of replication, repair and transcription, and their common mechanism of chromatin remodeling |
Project/Area Number |
22131008
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
花岡 文雄 学習院大学, 理学部, 教授 (50012670)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
益谷 央豪 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (40241252)
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Project Period (FY) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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Keywords | DNAポリメラーゼη / シスプラチン / 紫外線損傷 / 損傷乗り越え複製 / PCNA / DNA損傷トレランス / 翻訳後修飾 / ユビキチン |
Research Abstract |
研究代表者と研究分担者は、複製と修復をカップリングする損傷乗り越え複製の普遍性を明らかにするために、以下の研究を協力して進めた。 (1)ヒトDNAポリメラーゼ・イータ(Polη)の構造とシスプラチン損傷乗り越え反応:ヒトPolηは、主要な紫外線損傷のシクロブタン型ピリミジン二量体を効率よく、また比較的正確に乗り越えて複製することができる。一方、制がん剤として用いられているシスプラチンによるDNAの鎖内架橋に対しては、あまり効率がよくなく、また誤りがちな乗り越えしか出来ない。その構造的な基盤を明らかにすべくヒトPolηとシスプラチン損傷を持つDNAとの共結晶を作成し、X線解析により構造を明らかにした。その結果、ヒトPolηはシスプラチン損傷DNAの折れ曲がりを正すことが出来ず、プライマーの末端で鋳型DNAとの塩基対が異常な構造を取ることを見出した。 (2)ヒト細胞におけるPCNAの翻訳後修飾による複製阻害回避機構の解析:DNA損傷トレランス機構(DDT)において、PCNAの翻訳後修飾が重要であることが明らかになってきており、中でも164番目のリジン(K164)のモノユビキチン化は損傷乗り越え複製の鍵を握っていると考えられている。しかしヒト細胞でのPCNAの翻訳後修飾の生理的な意義は必ずしも明らかでなく、またホモ三量体を形成しているPCNAのそれぞれの修飾状態については議論がされていない。そこでK164をアルギニンに置換した変異体PCNAを発現するヒト細胞株を作成し、ヒト細胞でのPCNAのユビキチン化について解析した。その結果、変異体PCNAを発現するヒト細胞では DDTが低下し、Polηの有無に関わらず、紫外線に高い感受性を示すことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
損傷乗り越え複製の中心的存在であるPolηについて、次々と重要な知見を得ており、研究領域全体にとっても、またPolηをターゲットとした創薬にとっても、意義深い成果が得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で得られたPolηと相互作用するタンパク質で、まだ解析が出来ていないものがいくつもあり、それらの解析を進めることで、Polηの更なる機能が明らかになると期待される。損傷乗り越え複製におけるクロマチンリモデリングの役割も準備が進んでおり、出来るだけ早く着実なデータを蓄積したいと考えている。
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Research Products
(10 results)