2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Molecular mechanisms for establishment of sex differences. |
Project/Area Number |
22132003
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
伊藤 道彦 北里大学, 理学部, 准教授 (90240994)
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Keywords | 性分化 / 性決定 / Y染色体 / W染色体 / ツメガエル / メダカ / マウス / 生殖細胞 |
Research Abstract |
本研究は、ZZ/ZWおよびXX/XYという異なる性決定様式をもつ脊椎動物種(アフリカツメガエルおよびメダカ、マウス)を用い、WおよびY性染色体上に座位する性決定遺伝子の有無による初期性差構築の分子機構をそれぞれの種の遺伝的雌雄および動物間で比較解析し、脊椎動物における性差構築システムの多様性および普遍性を考察することを目的としている。2年目である本年度は、初年度の成果を受け、主にアフリカツメガエルの解析を行った。以下に記す。1.ZZ/ZW型の性決定様式を持つアフリカツメガエルの初期性差構築機構に関わる因子の同定を目的として、形態的に違いがない性分化初期、形態的違いが始まる形態変化期の各ZZ、ZW生殖巣からRNAを単離し、マイクロアレイ解析を行った。その結果、性差(ZZあるいはZWで発現量の差)が認められる性差遺伝子を数十個同定することに成功した。その中には、性ホルモン合成関連酵素や性差リガンド候補の遺伝子が含まれていた。2.アフリカツメガエルでは、WリンクのDm-W遺伝子が性(雌)決定遺伝子で、その祖先遺伝子のDmrt1遺伝子が雄決定遺伝子と考えられる。Dmrt1タンパク質の発現を生殖巣で調べたところ、ZZ特異的体細胞での発現、および雌雄両者での生殖幹細胞での発現が認められた。3.各種脊椎動物のDmrt1遺伝子を比較解析したところ、プロモーター領域に関しては、爬虫類、哺乳類、哺乳類種間では進化的保存性が高いのに対し、魚類、両生類は低いことがわかった(Chromosome Res.2012)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目である本年度は、両生類ではじめて初期性差構築期の遺伝的雌雄生殖巣のマイクロアレイ解析が成功した。これは、来年度以降で行う予定のアフリカツメガエル性差構築における遺伝子発現ヒエラルキーの解明および他の脊椎動物種との比較解析のために必須データとなると考えられ、意義深い。さらに、本年度は、WあるいはY染色体を持つ魚類から哺乳類にいたる4種の脊椎動物種で、雄誘導遺伝子Dmrt1の分子進化的解析、および、その考察を発表することができた(Chromosome Res 2012)。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策は、大きく以下の2点である:(1)本年度に同定されたアフリカツメガエル初期生殖巣における性差発現遺伝子に関して、性差構築の鍵と予想される遺伝子あるいはタンパク質の発現、機能解析を行う。さらに、解析が進んだ遺伝子に関し、マウス、メダカでオルソログの解析(文献、データベースあるいは実験による比較解析)を行う。(2)アフリカツメガエルDMRT1/DM-Wの標的遺伝子の単離を、クロマチン免疫沈降(ChIP)シークエンスによって行う。(2)に関しては、アフリカツメガエルのゲノム解析が日米共同で現在進行中である。解析可能な状況になり次第、研究を進める予定である。
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Research Products
(4 results)