2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Molecular mechanisms for establishment of sex differences. |
Project/Area Number |
22132003
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
伊藤 道彦 北里大学, 理学部, 准教授 (90240994)
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Project Period (FY) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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Keywords | 性分化 / 性決定 / 性染色体 / 性決定遺伝子 / ツメガエル / 生殖細胞 / プロモーター |
Research Abstract |
本研究は、WおよびY性染色体上に座位する性決定遺伝子の機能および分子進化、あるいは性決定遺伝子の有無による初期性差構築の分子機構を、ZZ/ZWのアフリカツメガエルを中心として解析を行い、その結果から、XX/XY型のメダカやマウスと比較解析を行い、脊椎動物における性差構築システムの多様性および普遍性を考察することを目的としている。4年目である本年度は、これまでの成果を受け、以下の結果を得た。1.ZZ/ZW型のアフリカツメガエルにおいて、マウスなどの哺乳類で性転換に関与するDax1の発現解析を行ったところ、性決定期後のZZ生殖巣で、ZWに比べより発現量が高いことがわかった。レポーターアッセイより、DAX1は、雌性ホルモン合成系遺伝子のSF1による発現上昇を抑制する可能性が示唆され、XX/XY型のマウスと機能が違うことが考えられた。2. アフリカツメガエルの遺伝的オス(ZZ)個体をエストロゲン処理し、発現誘導あるいは抑制が認められる遺伝子をスクリーニングし、数種類得ることに成功した。3.性決定遺伝子のDmy や Dm-Wの元遺伝子であるDmrt1 は硬骨魚類から哺乳類に至る脊椎動物で生殖巣内の体細胞の雄化遺伝子として機能していると考えられている。そこで、脊椎動物の原始型と考えられる無顎類のヤツメウナギでDmrt1 遺伝子を新たに単離し、転写開始点の決定を行なった。更に発現解析からDmrt1は体細胞でなく生殖細胞で発現が認められた。これらのから、Dmrt1 は脊椎動物の進化過程で、新たなプロモーター進化を伴って♂化機能を獲得した可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4年目である本年度は、脊椎動物の進化過程において、雄化遺伝子Dmrt1のプロモーター進化と機能を考察することができた。また、雌性ホルモンによって初期の雌化が誘導されないXX/XY型の哺乳類種と誘導されるZZ/ZW型のアフリカツメガエルで雌化機能の比較解析を行うために、雌性ホルモンで転写が増減する遺伝子をツメガエル種から数種単離する事に成功できた。来年度、それらの動物種との性差構築における進化的差異と普遍性を議論できると考えられ、概ね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策は、以下の5点である。①雄化遺伝子Dmrt1のプロモーター進化と機能をメダカ、アフリカツメガエル個体を用いて機能解析を行う。②アフリカツメガエルの生殖巣で、雌性ホルモンによって発現誘導される遺伝子に関し、哺乳類マウスで、そのオルソログの発現解析を行う。③性決定遺伝子のアフリカツメガエルWリンクDm-WあるいはメダカYリンクDmyと、元遺伝子のDmrt1の分子進化において、正の淘汰や平行進化があったかを検証する。④同一種でありながら、XX/XY型とZZ/ZW型の両性決定様式の地域集団が存在するツチガエルを用い、突然変異と性決定様式の連関性を調べる。⑤雄化に関わるDMRT1転写因子の転写活性化あるいは抑制機能に関わる因子の同定を抗DMRT1抗体による免疫沈降およびプロテオーム解析により試みる。
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