2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Integrative Systems Understanding of Cancer for Advanced Diagnosis, Therapy and Prevention |
Project/Area Number |
22134006
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小川 誠司 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (60292900)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ゲノム / エクソンシーケンス / SNPアレイ / がん / RNAスプライシング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標は、ヒトの主要な癌腫についてSNPアレイおよび大量並列シーケンスを用いた網羅的なゲノム解析によって、発がんに関わる全ての主要な遺伝子変異・無コピー数異常を同定し、診断・治療の新たな分子標的を同定することである。本目標に従って、H24年度までに、造血器腫瘍、泌尿器系腫瘍、脳腫瘍、小児腫瘍を含むヒトの主要な癌腫について、 1) 1500例のSNPアレイによる網羅的なゲノムコピー数の解析を行うとともに、 2) 大量並列シーケンスを用いた全ゲノム・全エクソン解析、RNAシーケンスのためのデータパイプラインを宮野研究室との共同研究により東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターのスーバーコンピュータ上に構築し、これを用いて、 3) また、上記腫瘍について、骨髄異形成症候群(MDS)を中心として200例以上におよぶ全エクソン解析、50例以上の全ゲノム解析を行うことにより、これらの腫瘍の発症に関わると考えられる変異の網羅的な同定を行った。特に、MDSにおけるRNAスプライシング因子の変異に代表されるような、従来まったく報告されていなかった遺伝子変異が多数同定された(Yoshida K et al., Nature 2012)。 4) 一方、同定された新規変異については、理化学研究所の古関博士、かずさDNA研究所中山博士らとの共同研究により変異の条件的ノックインマウスの作製を進めており、現在、主要なRNAスプライシング因子の変異であるSF3B1, U2AF1変異の条件的ノックインマウスが得られており、今後解析を進める予定である。 以上、SNPアレイ解析と大量並列シーケンスによる網羅的ながんゲノムの解析を行い、がんの発症に関わる新たな変異を多数同定するとともに、変異を有するマウスモデルの作製を行った。今後、これらの変異をターゲットした新たな診断法・治療法の開発が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1) SNPアレイ解析については当初研究期間内に2,000検体を解析することを目標としていたが、現在時点で、造血器腫瘍、泌尿器系腫瘍、脳腫瘍、小児腫瘍、軟部組織腫瘍を含めて既に1500検体を超える試料の解析が終了している。 2) 当初、全エクソン解析は一部の代表的な検体のみに限定して行う予定であったが、既に200例を超える腫瘍検体について全エクソン解析、また20例を超える検体についてはゲノムシーケンスを行い、これまでに多数の新規遺伝子変異の同定に成功している。 3) さらに以上のシーケンス解析データに基づいて、様々ながんを特徴づけるパスウェイ変異の同定に成功している。骨髄異形成症候群におけるRNAスプライシングのパスウェイ変異は代表的な成果である(Yoshida K et al., Nature 2012). 4) 重要な変異に関するマウスモデルなどの作成については、理化学研究所の古関博士との共同研究により、骨髄異形成症候群で同定したRNAスプライシング因子の主要な変異に関する条件的ノックインマウスの作製に成功している。 以上を踏まえて、本研究の進行状況は当初の計画以上の進展を得ることができていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1) SNPアレイ解析については造血器腫瘍、泌尿器系腫瘍、脳腫瘍、小児腫瘍、軟部組織腫瘍を中心として2000検体を超える試料の解析を行う。 2) 全エクソン解析、全ゲノムゲノムシーケンスについては、上記腫瘍のうち骨髄異形成症候群(MDS)、腎癌についてはそれぞれ計200例、100例を目標として全エクソン解析を行い、MDSの遺伝学的変異の全貌の解明を試みる。また、成人T細胞白血病、腎盂尿管癌、胚細胞腫瘍、その他の未解析の腫瘍についても可能な限り全エクソン解析を進めることにより新規遺伝子変異・分子標的の同定を進める。 3) 一方、骨髄異形成症候群については、同定された変異のうち主要な変異を対象として大規模な症例セット(N=~1000)についてTargeted-deep sequengingを行うことにより、遺伝学的変異が腫瘍の表現型・予後に及ぼす効果を明らかにする。 4) これまでに作製したRNAスプライシング因子の主要な変異に関する条件的ノックインマウスに関しては、本年度よりこれらの造血系の表現型の解析を開始する。またSF3B1変異については種々の固形腫瘍においても繰り返し見とれられる変異であることから、他の標的組織における条件的ノックインの効果を解析することにより、これらの変異による発がんメカニズムを生体レベルで明らかにすることを目指す。
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Research Products
(9 results)