Research Abstract |
本年度は,昨年度に遺伝的背景を解析するために開発した,Kolmogorov-Smirnovの検定法,ピーク検出アルゴリズム,ブートストラップ法による帰無分布の取得方法を用いたホモ接合体マッピングに基づく手法を,実際のデータに適用した結果を示し出版した.また複数の遺伝子が相互作用を起こすことによって生じる疾患に関連する遺伝子を特定するために開発してきた相互作用解析ツールをさらに高速化した.コピー数多様性のフェージングに関しては,全ゲノム上のアレーデータに適用可能な確率モデルを提案し,出版した.そして次世代シークエンサーデータ解析のために開発してきた,ベイズ推定や尤度比検定によるSNVコール,ペアエンド/メイトペアとリードdepthの組合せによるコピー数多型/変異やゲノム再編成の特定アルゴリズムを,27症例の肝臓がんと正常細胞由来のDNAのゲノム解析に適用し,変異の検出を行ってカタログ化した.そして,症例間での共通の変異パタンや,異なる変異のパタンを検出し,統計学的有意性を検証の上,実験的に検証を行った.また全遺伝子と疾患との関連を確率的に求め,さらにそれらをパスウエイでまとめ,疾患に関連するパスウエイを遺伝統計学的に見いだす方法を確立してパイプライン化し,これら27症例の肝臓がんのデータに適用した(論文投稿中).ゲノムワイド関連解析を駆使することによって,HCVキャリアの肝臓がん進展や,前立腺がん,乳がんのタモキシフェン治療,DLBCL,そして大腸がんへの感受性遺伝子の発見に貢献した.また発現解析に基づく卵巣がんの高精度な予後予測のシステムの構築を行ったとともに,エピゲノム状態を変化させる遺伝子をsiRNAにより抑制させた場合の,ゲノムワイドな発現変化とパスウェイを解析するシステムを構築し,重要なパスウェイの発見に貢献した.
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Strategy for Future Research Activity |
肝臓がんなどの症例で,肝臓細胞由来および正常細胞由来のDNAの全ゲノムシークエンスが順調に得られているとともに,全ゲノム上の発現プロファイルやエピゲノムデータも取得可能になってきたことから,それらの統合を行い,システム的なアプローチを導入することを今後の方策とする.
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