2012 Fiscal Year Annual Research Report
Higher brain mechanisms of Shitsukan perception
Project Area | Integrative studies of neural mechanisms and advanced information technologies for perception of material and surface qualities |
Project/Area Number |
22135007
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
小松 英彦 生理学研究所, 生体情報研究系, 教授 (00153669)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
一戸 紀孝 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所微細構造研究部, 部長 (00250598)
郷田 直一 生理学研究所, 生体情報研究系, 助教 (30373195)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 質感 / 視覚 / 表面反射特性 / 素材識別 / 脳科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
光沢知覚は重要な質感知覚の一つである。光沢知覚のメカニズムを調べるために、さまざまな光沢を持つ物体画像刺激を作成し、注視課題を行うサルの下側頭皮質からニューロン活動の記録を行った。上側頭溝下壁皮質に特定の光沢に選択性を持つニューロンを見出しその性質を詳しく調べた。その結果物体の形や色や照明環境によらず光沢の情報を表現するニューロンが存在し、それらのニューロンの集団の活動はさまざまな光沢を系統的に表現していることが示された。この結果を論文として発表した。また視覚野全体で光沢を持つ物体画像に強く反応する部位が一次視覚野から下側頭皮質にかけての腹側皮質に沿って広がることをサルのfMRI実験で示し論文として発表した。また質感認知のもう一つの重要な機能である素材識別に関しては、実物を見て触れる経験が素材の視覚表現にどのように影響を与えるかを調べるために、形を統制した9種類(金属、ガラス、セラミック、石、木目、樹皮、皮革、布、毛)の素材の実物刺激を作成し、サルに視線をコントロールした状態で触らせる課題の訓練を開始した。この経験前の脳活動については、実物刺激を撮影した素材画像刺激をサルに見せて、fMRIを用いて脳活動を計測した。またさまざまな素材の識別が大脳視覚野でどのように行われるかを明らかにするために、さまざまな自然素材のテクスチャを注視課題を行うサルに呈示して、V4野ニューロン活動の応答を調べる実験を開始した。また異なる輝度コントラストの色刺激に対するサルのV4野ニューロン応答を調べ、輝度コントラストの影響を下側頭皮質と比較した。またマーモセットにおいて、質感に選択的な領野を側頭葉上部に見いだした。この選択性を説明しうる低次視覚統計量の寄与について、他の質感刺激に対する神経活動も含めて検討した。一方、生体内で線維連絡を可視化し、その結合部位から覚醒下で記録を取る手法を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サルの素材識別の研究が行動実験とfMRIによる脳活動解析について進み、さらに触覚経験の影響を調べるための実験の準備を進めることができた。一方質の程度の識別に関しては、サルの視覚野における光沢情報の表現の解析について単一ニューロンレベルとfMRIの両面からの成果を論文として発表することができた。またマーモセットを用いた研究が進展し、質感情報に関する脳内ネットワークの一端が明らかになりつつある。これらのことからおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
素材識別のメカニズムに関しては、さまざまな素材でできた実物体刺激を用いた素材の体験が進んでおり、近いうちに実物経験後の脳活動を計測できる見通しである。これにより素材経験前後で脳のどのような部位でどのような変化が生じるかを明らかにできる。質の程度の識別のメカニズムに関しては、光沢知覚に影響を及ぼすことが知られている画像操作がニューロン活動にどのように影響するかを継続して調べることにより、ニューロン活動と知覚の関係を明らかにしていく。またマーモセットを用いた多点同時記録実験を推進し、側頭葉皮質及びこれと結合する他の脳部位において質感情報がどのように表現されてているかを明らかにしていく。
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