2012 Fiscal Year Annual Research Report
Analyses of small molecules behaviors in the body which is emerged by the cooperation of multi-organs.
Project Area | Establishment of Integrative Multi-level Systems Biology and its Applications |
Project/Area Number |
22136015
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 洋史 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80206523)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 生理学 / 情報工学 / 生体分子 / 発現制御 / 薬剤反応性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本項目においては、生命維持に必須の生体高次機能である小分子血中濃度のホメオスタシス維持機構にフォーカスし、血流による連結を考慮した多臓器連関モデルからトップダウンに、組織・細胞・分子階層へと、階層間を繋いで統合的モデルへと発展させるアプローチを用いて、全体像のシステム的理解を目指している。小分子としては、まず生合成過程が無く複雑性の低い小分子として、薬物分子をモデル小分子として検討を開始し、後期には生合成過程の考慮を要する内因性小分子へと発展させる研究計画となっている。平成24年度は、主に薬物分子をモデルとして用いて小分子の生体内挙動を記述するモデルの構築を進めた。具体的には消化管における薬物分子の挙動を記述するための数理モデルの構築を中心に検討を進めた。新たな消化管臓器モデルとしてTranslocation Modelを構築した。このモデルにおいては、経口投与後の薬剤から薬剤分子が溶出しつつ、消化管管腔を拡散しながら移動していく過程を、薬物分子の溶出挙動、位置関数および分散関数を用いて記述する点に従来のモデルとは異なる大きな特徴があり、消化管内の生理的な挙動を良く反映させることが可能となっている。またこの際、薬物分子の挙動制御に関与する代謝酵素や輸送担体などの分子機能、および転写制御によるこれらの分子活性の変動をモデル内に組み込むことが可能となっている。構築されたモデルは、薬物分子の分子量・pKa/pKb・Caco-2 膜透過性・CYP3A/ABCB1 代謝輸送活性のパラメータ値を入力することで消化管からの吸収挙動を精度良くシミュレーションすることが可能である事が、9 種類の化合物に関して確認された。構築されたモデルに関しては、A01 が構築したPhysioDesigner に実装し、Flint を連動させることでシミュレーションが実行可能であることも確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度までに、消化管機能を表現する新規数理モデルの構築に成功し、本新学術領域で構築されたシステムバイオロジー・プラットフォームへのモデル実装とシミュレーション動作の検証まで完了しており、当初の計画通りに順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度においては、薬物分子を生合成過程の無い小分子モデル化合物として用い、小分子の生体内挙動を記述するシステムバイオロジー・モデル構築に関する研究として、血流を介した全身臓器水平統合モデルの構築を進める。さらに、シグナル伝達・転写制御ネットワークと薬物分子の相互作用による代謝酵素・輸送担体の発現誘導・不可逆失活などをモデルに組み込む検討も進める。また本研究班では特にコレステロール・中性脂質などの脂質および脂溶性ビタミンなどの高脂溶性物質に着目して、既に基礎的な検討を開始している。これまでの検討から、脂溶性が非常に高く、血漿中の非結合型分子の割合が低い小分子に関しては、従来の薬物動態研究の中心仮説の一つである、非結合型分子のみが組織移行できるとする仮説が、適用できない例が存在する可能性が示唆されている。すなわちこのような小分子に関しては、循環血中においてLDL, HDL などの脂質粒子に取り込まれ、あるいは特異的なタンパク質に結合した状態で挙動しており、組織への移行も脂質粒子あるいは特異的結合タンパク質の受容体介在性の細胞内取り込みなどが主要な役割を果たす可能性が考えられ、これらの点に特に着目しつつ検討を進める。
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Research Products
(8 results)