2022 Fiscal Year Annual Research Report
The study on interstitial multicellular crosstalk; Significance of blood and lymphatic vessels.
Project Area | Interstitial literacy: Integrated understanding of disease pathogenesis based on interstitial cell diversity. |
Project/Area Number |
22H05063
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
内藤 尚道 金沢大学, 医学系, 教授 (30570676)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田井 育江 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (90749508)
|
Project Period (FY) |
2022-05-20 – 2025-03-31
|
Keywords | 間質性細胞 / 血管 / リンパ管 / 腸 / 多細胞間クロストーク / 恒常性 |
Outline of Annual Research Achievements |
全身の組織及び臓器は、機能の中心を担う実質細胞と、実質細胞を支持する間質に存在する様々な種類の細胞(間質性細胞)で構成される。これまで様々な生命現象や疾患病態は、実質細胞の機能を主体に理解され、実質細胞との関係性という観点から間質性細胞の意義は見出されてきた。 本研究は、腸を主たる研究対象として血管とリンパ管に焦点を当てると同時に、組織を構成する実質細胞、および他の全ての間質性細胞との細胞間相互作用を解析することで、間質性細胞は単なる実質細胞の支持組織という既存の概念から脱却し、間質性細胞に主眼に置いて研究する。腸の生理機能と疾患病態は、複数の間質性細胞がクロストークすることにより形成される複雑系により制御されるという仮説をもとに研究を進め、炎症と腫瘍をモデルとして、病態の形成と進行における複雑系間質性細胞クロストークの意義を血管・リンパ管研究の観点から解明することで、間質を再定義(間質リテラシー)することを目的とする。実験方法としては1細胞解析、3次元イメージングなど最先端の解析手法を駆使して、間質性細胞の重要な構成要素である血管・リンパ管に着目し腸を解析対象として、間質性多細胞間クロストークが持つ意義を解明する。 また領域内で連携して各班が専門とする免疫細胞、神経系細胞、間葉系細胞に関する専門的知見を取り入れることで、血管・リンパ管と複数の間質性細胞を統合的に解釈して、腸の機能と疾患病態における間質性細胞の機能に関する概念の変革を目指す。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本計画班では間質の構成成分である血管・リンパ管の解析に焦点をあてつつ、他の間質性細胞との多細胞間間質性細胞クロストークを解明し、さらには実質細胞とのクロストークも包括的に理解することで「間質細胞リテラシー」の推進することを目的に研究を実施した。最初に、胎仔期をモデルに解析した。胎仔期から新生仔期にかけて腸では機能が劇的に変化し、さらに腸内細菌叢に対する免疫応答が開始する。この変化の前後を比較することで、腸の全間質性細胞に生じる変化を解明することで、生理機能に関わる有意な間質性多細胞間クロストークを解明することを目的とした。血管・リンパ管の形態学的変化と機能変化を経時的に捉え、血管とリンパ管のクロストーク、及び他の間質性細胞と相互作用を、免疫染色を駆使して解析し、全間質性細胞を対象として、1細胞RNAseq解析を実施した。得られたデータを解析した血管、腸管の血管内皮細胞の形成には、これまで報告されていない遺伝子が関与する可能性が得られた。そのため、組織学的解析と網羅的遺伝子発現解析をやり直して実施した。また、炎症モデル、腫瘍モデルなどの疾患モデルの構築に取り組み、それぞれのモデルで血管構造を評価し、さらに血球細胞、リンパ管との位置関係を評価した。 また腸管血管の恒常性維持に関与すると考えられる遺伝子のKOマウスの作製に取り組んだ。血管内皮細胞特異的CreERT2マウスと、候補遺伝子のfloxマウスを掛け合わせることで、血管内皮細胞特異的なKOマウスを作製した。次年度以降に本マウスの解析を行い、間質細胞との関係性を明らかにする計画である。 以上の進捗状況から、腸管におけるクロストークの解明がやや遅れているため、本研究はやや遅れていると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は以下の3つの研究を展開する計画である。 1. 腸における生理的な間質性多細胞間クロストークの包括的理解に取り組む。腸は血管とリンパ管を含む多彩な間質性細胞が、規則的に配置され細胞間相互作用が生じることで組織の恒常性が保たれていると考えられる。1年目に引き続き、バイオインフォマティクス解析から得られた結果を、組織学的に評価する。また位置情報を紐づけた網羅的遺伝子発現解析の実験系を立ち上げ、腸管の血管内皮細胞の形態が変化する過程での、遺伝子発現変化の解析に挑戦する。また、特に血球細胞に着目して、いつどこから、どのようにして腸管に遊走しているか明らかにする。また各細胞を、フローサイトメトリーを用いて分離して遺伝子発現変化を評価する。2年間で腸管の免疫染色と網羅的遺伝子発現解析に取り組むことを目標にして、特に血管の恒常性維持に関与する間質性細胞の候補を絞り込む。 2. 腸炎モデルと腸腫瘍モデルを用いて、血管内皮細胞とリンパ管内皮細胞に着目して、間質性多細胞間クロストークの解明をおこなう。本年度は、炎症モデルと腫瘍モデルで、組織に遊走する血球細胞に着目して、その細胞分布を解析した。その結果を元に、計画一と同様に、炎症応答や腫瘍の形成過程で、腸管血管の血管新生、血管維持に貢献する細胞の候補を絞り込む。計画1と同様に、免疫染色とFACSを駆使して、腸管の血管内皮細胞、血球細胞を分離して解析を行う。 3. 間質性細胞におけるリンパ管の重要性の解明には、リンパ管の発生過程に重要な遺伝子の候補を絞り込み、その機能解析を通じて、腸管のリンパ管内皮細胞と間質細胞とのクロストークに関して解析する。
|
Research Products
(7 results)