2022 Fiscal Year Annual Research Report
退化した性染色体に残された機能は性の消滅危機から生物を救うのか?
Project Area | Sex-chromosome cycle: Dissecting mechanisms of sex-extinction avoidance approaching from sex-chromosome turnover |
Project/Area Number |
22H05072
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
阿部 拓也 東京都立大学, 理学研究科, 助教 (50779999)
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Project Period (FY) |
2022-05-20 – 2025-03-31
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Keywords | ニワトリW染色体 / ヒトY染色体 / DT40細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々の研究グループは培養細胞における性染色体の機能に着目し、ヒトTK6細胞、ニワトリDT40細胞においてそれぞれ性染色体を欠損させた細胞を作製し、表現型解析を行った。 これまでにTK6細胞 Y染色体欠損細胞においては顕著な表現型を見いだせていないが、DT40細胞 W染色体欠損細胞の解析で進展があった。DT40 W染色体欠損細胞では顕著な増殖能の低下が観察されるが、その原因遺伝子および染色体領域を確かめるために、染色体欠失細胞を作製した。その結果、8種類作製した染色体欠失細胞の1つにおいて、大きな増殖能の低下が見られたことから、原因遺伝子を5個程度に絞り込むことができた。またそれぞれの染色体欠失細胞のゲノム解析を行ったところ、W染色体のリファレンスゲノムからは考えられない欠失パターンが見られた。ニワトリW染色体には高度なリピート配列が存在し、未だに全長配列が決定されていないことから、現在のW染色体のリファレンスゲノムのコンティグ配置には間違いが存在すると考えられる。今回W染色体欠失細胞のシーケンスを行ったことによって、副次的にではあるが、正しいコンティグ配置を提示することができると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトTK6細胞とニワトリDT40細胞において、性染色体欠損細胞の表現型解析を行ってきた。残念ながら、TK6細胞 Y染色体欠損細胞ではRNA-seq解析やメタボローム解析においても顕著な影響を見出すことができず、これまでに体細胞におけるY染色体の存在意義を見出すことはできていないが、DT40細胞 W染色体欠損細胞では増殖能の低下の原因となる染色体領域を絞り込めている。さらに染色体領域の絞り込みのための染色体欠失法の開発やW染色体の配列決定など、当初は予定になかった技術開発や発見があった。これらのことから研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ニワトリW染色体欠損細胞の表現型解析を進め、何が増殖能の低下の原因となっているかを明らかにする。具体的には、これまで転写や細胞内代謝に大きな影響がないことを確認していることから、今後DNA複製、DNA修復、DNA組換え、染色体分配において、異常が見られるかどうか確認する。またこれまで5個程度に絞り込んだW染色体上の遺伝子の中でどれがその表現型の原因となっているのかを突き止める。
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Research Products
(11 results)