2022 Fiscal Year Annual Research Report
「かたち」と「うごき」を表す高次元データ記述子の開発
Project Area | Establishing data descriptive science and its cross-disciplinary applications |
Project/Area Number |
22H05107
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平岡 裕章 京都大学, 高等研究院, 教授 (10432709)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 豊 九州大学, 数理学研究院, 教授 (20304727)
池 祐一 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 准教授 (50850400)
落合 啓之 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (90214163)
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Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2027-03-31
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Keywords | パーシステントホモロジー / D加群 / マグニチュードホモロジー / バーチャルリアリティ / 高次元可視化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本計画班では高次元データを直感的に知覚できるデータ記述子の開発を目標に据えた3テーマを実施している。それぞれのテーマごとに実績概要をまとめる。 テーマ1(バーチャル・リアリティ(VR)を用いたインタラクティブな高次元可視化の数理):材料科学班の木村と共同して我々が開発を進めている高次元可視化ツールを、構造材料、バッテリー、エネルギー関連材料などの材料科学に現れる特異性の可視化に適用する研究に着手した。また4次元空間の可視化の数学的研究としては複素2次多項式族のホースシュー領域におけるモノドロミー問題を定式化することを試みた。 テーマ2(パーシステントホモロジーの代数解析・代数幾何的研究とその応用):本年度はD加群の基本的な文献調査および具体的な問題における計算を積み重ねることで、当該分野の方法論を感覚レベルに落とし込む作業に従事した。またその延長として柏原結晶基底の理論やそれに付随する幾何学的表現論についても文献調査を行い、マルチパラメータ・パーシステントホモロジーが定める表現空間の幾何学的な特徴づけを与える研究を開始した。 テーマ3(マグニチュードホモロジーの自然言語処理・オミックスデータ解析への応用):機械学習で用いられているグラフ埋め込み法への応用を念頭に、マグニチュードホモロジーの確率論的側面を明らかにする研究を実施した。Erdos-Renyiランダムグラフが定めるマグニチュードホモロジーについて、対角性を特徴づけるグラフ構造を離散モース理論を用いて解明することに成功した。またそこに現れる相転移現象を数学的に証明することにも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究進捗状況は極めて順調であり、当初の計画を実施できていることに加え、予想していない新たな方向性を見出すことにも成功している。 テーマ1:材料科学に現れる各種データ(3-4次元空間のボクセルデータや点群データ)を、石井、五十嵐らが開発を進めるvirtual realityソフトウェアへ入力するインターフェースの整備が完成した。またいくつかの小スケールなサンプルデータに対して本手法の有効性を確認することもでき、次年度に向けた本格始動の基盤固めが行えた。 テーマ2:D加群についてはHotta-Takeuchi-Tanisaki (Progress in mathematics 236, Birkhauser, 2008)をテキストに用いて細部にわたって本理論の習得に努めた。その後、パーシステントホモロジーへの応用を意識して、結晶基底をはじめとする幾何学的表現論に関して本研究で使用する概念の文献調査をおこなった。本期間において次年度以降本格的に開始する幾何学的表現論研究の基盤固めが行えた。 テーマ3:マグニチュードホモロジーのランダムグラフ上の組合せ論的な性質が詳細まで明らかにできた。残された問題としては、辺上の確率が高い領域における相転移の可能性を明らかにすることが挙げられるが、こちらについては離散モース理論を用いた手法では解決が難しいと感じている。そこで次年度以降、本課題については別の方法論を検討することから着手する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
テーマ1:材料科学班と共同して実際の材料データに我々が開発したVRソフトウェアを適用する研究を本格始動させる。そのための最初のステップとして、材料の反応現象データをターゲットにし、本手法と従来の手法との相違点を特徴づける研究に着手する。また高次元可視化の数学的研究では2次多項式族のホースシュー領域において「擬モノドロミー」に相当する現象を観測しているが、その概念を数学的に定式化し、その作用とマンデルブロー集合の関係について研究を進める。 テーマ2:柏原によって導入された結晶基底をマルチパラメータ・パーシステントホモロジーの表現空間に導入する研究に着手する。これは従来の直既約分解を用いた表現論研究と比較して分解の精度は少し落ちるが、その一方で幾何学的な側面を明確に理解でき表現空間の帯域的な構造を特徴づけることが可能になる。また2023年夏から2024年夏にかけて京都大学に研究滞在するHerbert Edelsbrunner氏(IST Austria)との共同研究として、six packとcompressed multiplicityの相互関係について調べる計画である。
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