2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Systems biosynthetics based on accumulation, prediction, and creation of biological reactions |
Project/Area Number |
22H05120
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
葛山 智久 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (30280952)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 哲弘 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (40323480)
吉田 彩子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (90633686)
|
Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2027-03-31
|
Keywords | 天然有機化合物 / ホスホン酸 / 生合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、構造多様性一挙構築型生体反応の集積・予知・創出にかかる研究のうち、ホスホン酸化合物の生合成に関与する生体反応の集積・予知・創出を目指した。 ホスホン酸化合物として、放線菌の一種であるSaccharothrix sp. ST-888 が生産するphosphonothrixin (PTX)を選抜した。 まず、PTX生合成遺伝子(ptxB)を大腸菌で発現することで、9個の組換えPtxBタンパク質(PtxB4-7とPtxB10-14)を可溶性酵素として精製することに成功した。その際、PtxB5とPtxB6がヘテロ複合体(PtxB5/6)を形成することも証明した。さらに、これらの組換え酵素を様々に組み合わせて反応条件を検討した結果、ATP、NADH、NADPHの存在下、PtxB4とPtxB10-14の6個の組換え酵素と基質であるphosphoenolpyruvate (PEP)をインキュベートした際に、2-hydroxy-3-phosphonopropanoic acid (HPPA)と(2,3-dihydroxypropyl)phosphonic acid (DPPA)が生成することを実証した。また、TPP、NAD+、FADの存在下、PtxB5/6とPtxB7、PtxB10の3個の組換え酵素と基質であるpyruvateとDPPAをインキュベートした場合には、HOPAとPTXが生成することを実証し、PTXのin vitro再構成系の構築を達成した。 次に、個々のPtxB酵素の触媒する反応を解析することで、PEPから始まるPTXの生合成経路の全容を解明した。中でも、PTX生合成の最終段階において、アセトヒドロキシ酸合成酵素ホモログPtxB7と遺伝子スプリット型トランスケトラーゼホモログPtxB5/6という2つの異なるTPP依存性酵素が共同して触媒する新しいアセチル化反応を発見した。このアセチル化反応では、PtxB5/6が、PtxB7から反応液中に放出されるhydroxyethyl (HE)-TPPエナミン由来のアセチル基を立体選択的にHOPAに転移してPTXを生成することを実証した。また、PtxB7の結晶構造解析にも成功し、他の酵素との構造比較から、mobile loopの特性がhydroxyethyl (HE)-TPP enamineの放出に関連していると推定した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、構造多様性一挙構築型生体反応の集積・予知・創出にかかる研究のうち、ホスホン酸化合物の生合成に関与する生体反応の集積・予知・創出を目指し、放線菌の一種であるSaccharothrix sp. ST-888 が生産するホスホン酸、phosphonothrixin (PTX)を選抜した。研究成果として、PTXの生合成の全容解明に成功するとともに、これまで知られていなかった新たな立体選択的アセチル化機構を明らかにすることができ、二次代謝産物の生合成酵素レパートリーの拡大に貢献ができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は、構造多様性一挙構築型生体反応の集積・予知・創出にかかる研究のうち、ホスホン酸化合物の生合成に関与する生体反応の集積・予知・創出に関して成果を上げることができた。次年度は、ポリケチドの生合成に関与する生体反応の集積・予知・創出にかかる研究を推進するため、非タンパク質性アミノ酸であるシスペンタシンの生合成マシナリーの同定と生合成機構の解明を目指す予定である。
|