2023 Fiscal Year Annual Research Report
他との交雑を可能にする開花時期決定のゲノム動態原理
Project Area | Genomic dynamics underlying the plastic hermaphroditism in plants: the basis of exploratory reproductive adaptations. |
Project/Area Number |
22H05180
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井澤 毅 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (10263443)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 純一 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (30345186)
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Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2027-03-31
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Keywords | 光周性花芽形成 / イネ / フロリゲン / ゲノム編集 / 短日植物 / Ghd7遺伝子 / シス制御配列 |
Outline of Annual Research Achievements |
両性花の他殖の成立に必須な花形成の同期機構には環境応答性の解明が必要である。これ までの解析から、イネでは、開花遺伝子群が、異なる組み合わせの自然片を持つことで、異なる環境応答性を獲得し、広範囲な栽培域を可能にしていることが明らかとなっている。これまでに、気温応答性と光周性の花芽形成が同じ光受容体・温度センサーを用いて、同じ花芽形成抑制遺伝子であるGhd7遺伝子の転写制御・活性制御を通じて、花芽形成のタイミングを決めていることを明らかにしてきた。この遺伝子ネットワークの種内多様性を明らかにすることで、他殖の成立に必須な野外での環境応答性の分子機構の多様性を理解する。
本研究では、まず、ゲノム編集技術により cis 欠失変異導入変異系統を網羅的に創出し、Hd3a, RFT1, Ghd7といった鍵となるイネ花芽形成遺伝子群のcis制御配列を完全同定する。現在までに、Ghd7という長日条件もしくは低温条件で働くイネの主たる花芽形成抑制因子に関して、転写開始点から約60kbp上流までをゲノム編集による欠失変異を用いて探索することで、約27kbp上流にある200bp内に、フィトクロムによる転写を正に促進するシス配列と概日時計の作用で、特定の位相の時刻で抑制するシスが近傍に存在していることを明らかにしていて(河内ら、第145回日本育種学会講演会優秀発表賞)、現在、さらなる絞り込みを行っている。次に、遺伝研や赤木班との共同研究で、 野生イネと栽培イネの数千系統におよぶ大規模ゲノムデータに基づき、ゲノム中に散りばめられた花形成関連遺伝子群のゲノム多様性をコアレスセント解析している。これらのゲノム多様性を利用した、推定QTN探索系の開発を行っている。そして、遺伝子間におけるcis制御因子群の機能分化・新機能獲得の包括的なモデル化を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Ghd7遺伝子に関しては、60kbの領域をサーベイして、転写開始点から27kb上流の200bpに促進・抑制に働くシス制御配列がタンデムに並んでいることを示す予備的成果を得ている。 今後、絞り込みを進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
シス制御配列を同定した後は、その配列を認識する転写複合体を同定し、その機能をゲノム編集による突然変異を用いて検証していく。
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