2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Photonic Computing Highlighting Ultimate Nature of Light |
Project/Area Number |
22H05194
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
川上 哲志 九州大学, システム情報科学研究院, 准教授 (20845523)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 貴継 九州大学, システムLSI研究センター, 准教授 (80756239)
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Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2027-03-31
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Keywords | 光電融合回路 / 光コンピューティング / 機械学習 / 浮動小数点演算 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,光電融合した計算機基盤をより柔軟・効率的に活用すべく,デバイス/回路/アーキテクチャ/アルゴリズムを包含したシステム評価環境の構築,ならびに,本環境を用いた計算機システムアーキテクチャの再構築を目的としている. 2022年度は,その中核となる光電融合の演算器,特に,光電融合浮動小数点乗算器の検討を実施した. これまでに光デバイスを活用した演算回路が提案されているが,その多くはアナログ演算に基づいた回路であり,これによりCMOS回路に対する高性能性・低電力性といった優位性を示している. しかしながら,現実のアプリの多くは浮動小数点(FP)演算を基本としており,特にニューラルネットワークの学習処理においても高精度なFP演算が必須となる一方,アナログ演算器で直接FP演算を実現することは不可能である. したがって,本研究ではアナログ演算ベースの光回路をFP演算にも適応すべく,(1)FP回路のボトルネック解析・探索を実施し,(2)光デバイスで実現可能な演算部分を特定・回路を考案し, (3)性能・電力評価による電気回路との比較,(4)アナログ演算による精度への影響調査を実施した. まず,(1)でBFLOAT16形式向けのCMOS浮動小数点乗算回路を各処理ごとにクラス分けを行い,レイテンシー・エネルギーのボトルネックとなるコンポーネントを特定した結果,8bit 乗算器が支配的であることがわかった.(2)でこの8bit 乗算器の光実装法を考案した.具体的には,コヒーレントレシーバを応用した光アナログ乗算器であり,光電変換後の信号値が乗算結果となる.次に,性能評価により既存のCMOS回路に対してレイテンシーは56%,エネルギーは41%改善できることを示した.さらに,(4)ノイズを考慮した演算精度評価によって,雑音が10^(-9)以下では高精度演算が可能であることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究においては,計画の中核となる光演算器の実現が大前提となる. 2022年度では,ニューラルネットワークの学習処理への適応を見据え学習処理に最適なBFLOAT16形式向け光電融合乗算器の考案と性能・電力・精度といった多面的な評価を実施できた. まず,既存の浮動小数点演算回路のボトルネック解析を実施することで,光演算回路を効果的に導入するコンポーネントを分析したうえで,最も効果的な場所に高効率なアナログ光乗算器を提案・導入した. その結果,既存の電気CMOS回路と比較して低レイテンシー・低エネルギー消費化を達成するとともに,精度面でも問題なく正しく機能することが検証できた. これは,光デバイスの優位性を演算器レベルでも保持できることを示す重要な結果であるとともに,これまでアナログ方式に基づく整数低ビット演算(特に,ニューラルネットワークの推論)のみの応用にとどまっていた光コンピューティング応用を浮動小数点演算(特に,ニューラルネットワークの学習)へ拡大する起点となるものである. なお,本成果は国際学会で発表済みであり,さらなる効率化のために,他のコンポーネントの光回路化の検討も着手している.以上から,本研究は概ね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は(1)BFLOAT16向け演算器の回路アーキテクチャ探索,(2)大規模並列光積和演算器の考案のシステムレベル評価環境の検討,(3)光物理リザーバーを活用するアルゴリズムの検討を実施する予定である. 項目(1)に関しては,今年度構築したBFLOAT16向け光電融合乗算器は,回路内においてレイテンシー・エネルギーボトルネックとなる1つのコンポーネントについてのみ光回路化を検討した.しかしながら,他のコンポーネントの光化によってさらなる高性能化・低消費電力化の可能性があるため,光回路実装を検討するとともに回路アーキテクチャ探索を実施し,最適な光電融合回路を検討する.さらに,ニューラルネットワークの学習処理に必要な浮動小数点加算器の検討も同様に実施する予定である.これにより,BFLOAT16形式向け積和演算が可能となれば,光電融合計算機システムにおいて,学習処理の実行基盤が構築できる. 項目(2)に関しては,光の並列性を活用した別の行列演算器の構築を目指す.具体的には,光集積回路と空間変調器(LCOS)を活用することで光の並列演算性能を極限まで活かした高スループット志向の計算機システムを検討する. 本計算機システムは項目(1)と異なり大規模なストリーミング推論演算応用を見据え,stable diffusionやvision transformerといった大規模モデルの実行を目的としている.また,このような大規模モデルをアナログ計算機に基づいて推論した場合の演算性能調査のため,システムレベルでの精度評価シミュレータを開発予定である. 項目(3)に関しては,光物理リザーバーの新たな応用可能性を探索すべく,新規アルゴリズムの検討を実施する.物理リザーバーの出力をNNアーキに組み込むことでよりロバストな推論環境を構築し,応用拡大を目指す予定である.
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