2022 Fiscal Year Annual Research Report
陸海境界領域を含む沿岸域における陸起源物質の動態解明と縁辺海への輸送量の定量
Project Area | Macro coastal oceanography: integrated simulation for the material dynamics from the land through the open ocean |
Project/Area Number |
22H05202
|
Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
杉本 亮 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 教授 (00533316)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅澤 有 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50442538)
小林 志保 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助教 (60432340)
中田 聡史 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境保全領域, 主任研究員 (70540871)
|
Project Period (FY) |
2022-06-16 – 2027-03-31
|
Keywords | 陸起源物質 / 地下水 / ラジウム / ラドン / 有色溶存有機物 / 河川水 |
Outline of Annual Research Achievements |
①放射性物質等を利用した陸水流入評価 東京湾奥に流入する主要河川において定期的な観測を行い、各種栄養塩濃度とその構成比が、年間を通じて各河川に固有であり、河川間での違いがあることを確認した。また、湾奥部4地点でのRn、Raの定期観測の結果、特に湾奥東部では再循環水(RSGD)を含めた海底湧水(SGD)のシグナルを得ることが出来た。伊勢湾および主要流入河川においては、2022年秋季から冬季に調査を行った。表層水中の224Ra・223Ra濃度は湾奥部で最も高く、SGDによる影響が確認された。さらに224Ra/223Raから水塊年齢を算出したところ、湾奥部では0.5日程度であったが、湾口部では6日程度であった。栄養塩は水塊年齢が2日以上の場所ではほぼ枯渇しており、湾奥部に供給された陸起源栄養塩は流入後速やかに消費されているものと推察された。
②陸起源物質の動態評価 2022年度秋季および冬季に大阪湾、伊勢湾、東京湾において、陸起源物質の外海への流出経路を推定するための調査を行った。有色溶存有機物(CDOM)について、主に海域由来と考えられる易分解成分の寄与を調べる有機物分解実験を行った。秋季の東京湾沿岸では易分解成分の寄与が無視できない一方、その他の季節および海域では易分解成分の寄与は極めて小さく、有色溶存有機物は塩分及び溶存有機炭素濃度と強い相関を示した。さらに、CDOM等の陸起源物質の源流と流下過程での変遷を調査するため、大阪湾に流入する淀川流域の上流にあたる琵琶湖流域、東京湾奥に流入する主要河川の中流・下流域、および利根川感潮域においてCDOM濃度等の水質観測を実施した。琵琶湖流域において、CDOM濃度を計測し空間分布を得ることができた。利根川の感潮域においては、河口堰から河口までのCDOM濃度の空間分布を得ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①海洋観測体制 船舶通行量が多い東京湾での観測は困難な面があるが、調査船を所有する行政機関や大学との連携により、河川・地下水の流出調査を実施する体制を構築してきた。湾奥部に流入する主要河川においても観測に必要な知見(最適な観測地点・駐車地点・タイミング)が整い、今後の定期的観測ができる体制が出来た。伊勢湾においては、水産資源研究所・三重県水産研究所・福井県立大学で共同研究協定を結び、円滑的な観測体制を構築した。大阪湾においては、神戸大学の調査船を使用することで、観測を実施できる体制が整った。
②放射性物質・CDOM等の分析体制 福井県立大学にゲルマニウム半導体検出器を導入し、長寿命Ra測定を行える環境を整えた。東京農工大においても、東京湾におけるRnやRaの測定を行う設備も整え、調査・分析に関わる体制は順調に整いつつある。 一方、対象流域において広範囲にCDOM濃度を計測するためCDOMロガー等の機材を導入し、他班と連携した観測体制を整備した。加えて、対象海域のCDOMにおける易分解成分の寄与について確認するとともに、易分解成分を除いた画分については塩分及び溶存有機炭素濃度との関係式もそれぞれ得ることができ、2年目以降のCDOM観測方針を決定することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
①放射性物質等を利用した陸水流入評価 東京湾湾奥に注ぎ込む主要河川での定期的な観測を実施し、2022年度に把握した各河川の各種栄養塩濃度と構成比の違いが、各季節で同様にみられる現象であるか、確認する。また、GISを用いた解析や、Rn分析、各態窒素の安定同位体比分析などを組み合わせることによって、栄養塩の起源や変容などの動態についても明らかにする。東京湾全体の海域表層におけるRn濃度分布を乾季の後と雨季の後の2季節において実施し、地質特性や護岸特性の面から解析を進める。伊勢湾においては、季節毎の海洋観測および河川観測を実施し、伊勢湾に流入する地下水量を定量する。また、4種類のRa同位体の組み合わせから地下水を淡水成分と再循環水成分に識別することも試みる。大阪湾においては、湾内表層水のRa活性の測定行い、Raを用いた地下水流入評価が可能であるのか、検証作業を進める。
②陸起源物質の動態評価 各海域において、季節ごとに海洋観測を実施し、塩分、溶存有機炭素に加えて溶存有機窒素、栄養塩等を測定し、溶存有機炭素と溶存有機窒素の関係式を求める。陸域から流入した栄養塩の溶存有機窒素への変換率を求め、それに上記の関係式を併せて用いることにより、沿岸域から外海への窒素の流出フラックスを易分解成分と難分解成分に分け流動モデルにより連続的に評価する。 各調査海域・流域おいて収集されたCDOM濃度等の水質データを解析し、その時空間分布を明らかにすることで、陸と海の陸起源物質の動態解明にせまる。調査流域を石川県七尾湾・広島県広湾などの二級河川にも拡張し、CDOM濃度等の水質データを収集する。陸海統合シミュレーションで得られているDOC計算結果を活用して、DOCと相関の高いCDOM濃度の計算データを整備する。
|
Research Products
(8 results)